研究課題/領域番号 |
04044064
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
澤岡 昭 東京工業大学, 工業材料研究所, 教授 (40029468)
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研究分担者 |
HORIE Yasuyu ノースカロライナ州立大学, 工学部, 教授
田邊 靖博 東京工業大学, 工業材料研究所, 助教授 (70163607)
田村 英樹 東京工業大学, 工業材料研究所, 助手 (30188437)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
1993年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1992年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | ダイヤモンド / シリコン / 衝撃圧縮 / 衝撃圧力 / ダイナミックコンパクション / 計算機シミュレーション / 微細構造 / 発熱化学反応 / 窒化ホウ素 / 計算シミュレーション |
研究概要 |
本研究はダイヤモンド粉末の衝撃固化に関するものである。ダイヤモンドは最も強い共有化学結合性を持つ物質であり、しかも高圧力下でのみ安定な物質なので、通常の方法によって焼結することは困難である。粉体を衝撃圧縮する場合、粉体粒子の表面の温度は著しく上昇することが知られている。この温度上昇は極めて短時間であり、同時に衝撃圧力によって粉体が強く圧縮されるので、この現象を巧みに利用することによって、ダイヤモンドの緻密な多結晶体を製造することができる。 東京工業大学では実験を通じて、ダイヤモンド粉末のダイナミックコンパクションについての知見を蓄積してきたが、得られる多結晶体に発生するクラックがこの技術の実用化を阻んできた。クラックの発生は、金属カプセル中のダイヤモンド粉体中の著しい温度と圧力の勾配、圧縮状態からの急速な解放と急速冷却によるものである。本研究においては、極端な圧力勾配の生じないカプセル形状の設計及び、化学反応熱を利用した残留温度の制御を行い、クラックの発生を抑制することを主眼点に研究を行った。 粉体のダイナミックコンパクションは、マイクロ秒オーダーの短時間の現象であり、しかも粉体中の粒子の表面と粒子内部の温度が著しく異なるため、衝撃温度の計測はほとんど不可能である。現在、行うことができる唯一の研究手段は計算機シミュレーションである。より確度の高いシミュレーションを行うためには、衝撃回収試料の微細構造とシミュレーションを対比させることが必要である。回収体の微細組織は衝撃圧縮と解放の全プロセスを反映しているので、目的のステージの状態を抽出することは容易ではないが、シミュレーションと実験の対比を繰り返すことによって、信頼性の高い衝撃圧縮プロセスの分離が行えるようになった。このことが本研究における最大の収穫である。 シリコンやチタンをダイヤモンド粉末に添加することによって、衝撃圧による化学反応を誘起させ、この反応熱を利用して衝撃残留温度を制御する方法が澤岡らによって提案され、シリコンを約7%含むダイヤモンド粉末の衝撃固化が有効であることが見出されているが、この条件が最適のものであるのか、他にもっと優れた条件があるのか不明であった。衝撃実験はコストが高く、特殊な環境でのみ実施することができるので、数多くの実験を行い、その中から最適値を絞り込んで行く方法を行うことは困難である。計算機シミュレーションを行いながら、狙いを定めた実験を行い、更にシミュレーションによって、条件を精密化する方法を採用した。 計算機シミュレーションはすべて、アメリカ・ノースカロライナ州立大学において実施した。2次元解析コード「DYNA」を使用した。まず、ステンレス鋼製の試料カプセル(外径24mm、内径12mm)に厚み2〜5mmの試料室を設け、ダイヤモンド粉末を60〜69%充填して、厚み3.2〜4.3mmの鉄製の飛行板を2.1〜2.5km/sで衝突させた場合のカプセル内の圧力の変化を数値解析した。次いでダイヤモンドに5〜10%シリコン粉末を添加した場合の化学反応を伴う圧力と温度に関する数値シミュレーションを行った。これと平行して、東京工業大学ではシミュレーション範囲内のいくつかの条件で衝撃実験を行い、回収試料を切断研磨して、光学及び電子顕微鏡によって微細組織の観察、ビッカース微小硬さの測定を行った。 衝撃実験の結果は、回収物の特性は出発ダイヤモンド粉末の粒径に大きく依存するものであり、2〜4μmのものが最も良い結果を与えることが分かった。この粒径のものについて、シリコンの添加量、カプセルの形状を変化させた実験を行い、結果をシミュレーションに反映させた。 最終的には、化学反応を伴う粉体のダイナミックコンパクションについての一般的な数値シミュレーション手法を開発することができた。これを応用して、実用目的に使用することができるダイヤモンドのダイナミックコンパクションを行うには、10kg以上の高性能爆薬を爆発させることが必要であることが分かった。このためには日本の施設では不十分なので、海外との一層の国際協力が必要である。
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