研究課題/領域番号 |
04044065
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大倉 一郎 東京工業大学, 生命理工学部, 教授 (90089821)
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研究分担者 |
西坂 剛 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 教授 (40101084)
WOHRLE Diete Bremen大学, 有機高分子学科, 教授
DIETER Wohrl ブレーメン大学, 有機高分子学科, 教授
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研究期間 (年度) |
1992 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
5,300千円 (直接経費: 5,300千円)
1994年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1993年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1992年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | フタロシアニン / ポルフィリン / 光線力学療法 / 光増感剤 / ヘマトポルフィリン / ヘマトポルフィリン誘導体 |
研究概要 |
本研究では、中心金属として亜鉛を、側鎖としてスルホ基数が異なるフタロシニアンを合成し、その光化学的性質を調べるとともに光化学治療における効果を検討した。 亜鉛スルホフタロシアニアンは、Weberらの方法を改良して合成した。スルホ基数の異なる亜鉛-フタロシアニンは原料化合物のモル比を変えることにより調製した。HPLCによりこれらスルホ基数のことなる化合物の完全分離を試みたが、完全には単独物質が得られなかたので、亜鉛テトラスルホフタロシアニン(スルホ基数4個の化合物、ZnTSOPcと略記する)とそれ以外の化合物(スルホ基数1〜3の混合物で平均スルホ基数は2.3である。ZnTSPc_<mix>と略記する)とに分離し,それぞれについて光化学的挙動と光化学的治療効果とを比較検討した。 細胞は、MH134細胞をマウス腹腔中にて継代培養したもの、及び対数増殖期にあるHeLa細胞を用い、培地はGIBCO社製F-10培地をそのまま用いた。フタロシアニンの細胞への取り込みにはHeLa細胞を用いた。レーザー光照射には、アルゴンレーザー励起DCM色素レーザーを用いた。波長は680nm、出力は100mW/cm^2である。殺細胞効果の判定には、光照射後4時間経過したところでトリパンプル-染色を用いて行った。また、細胞の形態変化は、走査電子顕微鏡を用いて観察した。 ZnTSPc吸収スペクトルは636nm付近に極大吸収を示した。これは、フタロシアニンの会合体の吸収スペクトルであり、ZnTSPcは水溶液中で会合体になっていることを示している。この会合体は光励起寿命が短く、光化治療には不適当であるが、この水溶液に、中性の界面活性剤であるトリトンX-100を添加すると、界面活性剤の濃度を増大させるに従い、636nmの吸収強度が減少し、678nmの吸収強度が増加した。これは、界面活性剤の添加により会合体が解離して単量体になったためと考えられる。後述するように細胞に取り込まれたフタロシアニンは単量体で存在し、細胞は界面活性剤の添加と同様の効果を示すことがわかった。 細胞へのフタロシアニンの取り込みはフタロシアニンの励起スペクトルを測定することにより行った。ZnSPc_<mix>がZnTSPcに比べ、はるかに細胞によく取り込まれていることが分かった。 殺細胞効果に対する照射エネルギー依存性およびフタロシアニンの濃度依存性を調べた結果、ZnTSPcでは、4.0×10^<-5>Mの濃度のとき、照射エネルギーが減少するに伴い、殺細胞効果が減少した。また、4.0×10^<-6>M以下の濃度では、殺細胞効果が認められなかった。これに対し、ZnSPc_<mix>を用いた場合には4.0×10^<-7>Mの濃度までは照射エネルギーに関係なく、強い殺細胞効果を示すことがわかった。これは、ZnSPc_<mix>の方がより細胞に取り込まれやすいためと思われる。以上により、ZnTSPcとZnSPc_<mix>との比較ではZnSPc_<mix>の方がより低い濃度、および、より低いエネルギーでも、優れた殺細胞効果を示すことが判明した。 本研究では、スルホ基数の異なる亜鉛フタロシアニンを合成し、光化学療法における有用性を検討した。蛍光分析の結果から、フタロシアニンは細胞内では単量体として存在し、ZnSPc_<mix>方がZnTSPcよりも効果的に細胞に取り込まれていることが判明した。殺細胞効果の比較では、ZnSPc_<mix>の方が、より低い濃度、より低いエネルギーにおいても、優れた殺細胞効果を示すことがわかった。電子顕微鏡による細胞の致死過程の形態学的観察、および溶血実験の結果から、ZnSPc_<mix>のおもな作用部位は細胞膜であり、光照射により細胞膜が大きなダメ-ジを受けるものと思われる。
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