研究課題/領域番号 |
04044071
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小林 俊一 新潟大学, 積雪地域災害研究センター, 教授 (70001659)
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研究分担者 |
孫 吉 中華人民共和国黒龍江省公路局, 局長
邵 樹徳 中華人民共和国黒龍江省交通庁, 副庁長
楽 鵬飛 中華人民共和国黒龍江省交通庁, 副処長
石井 吉之 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (40222955)
成田 英器 北海道大学, 低温科学研究所, 講師 (20001662)
石川 信敬 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (70002277)
早川 典生 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (70143815)
対馬 勝年 富山大学, 理学部, 教授 (00002098)
鈴木 哲 新潟大学, 工学部, 教授 (30018907)
秋田谷 英次 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (20001654)
SUN Ji Director of Heilongjiang Road Bureau
SHO Shuda Vice Director of Ministry of Heilongjiang Communication
LE Pengfei Vice Chief of Ministry of Heilongjiang Communication
和泉 薫 新潟大学, 積雪地域災害研究センター, 助教授 (50114997)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
11,000千円 (直接経費: 11,000千円)
1993年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1992年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
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キーワード | 吹雪 / 吹き溜り / 涎流氷 / 無人気象観測装置 / しもざらめ雪 / 過冷却水 / 雪害 / 凍上 |
研究概要 |
平成5年7月に無人気象観測装置のデータ回収と装置の保守、点検のために現地に赴いた。冬期には気温が-20〜40℃に低下する為に、冬の現地での装置の保守、点検は非常に困難を伴う。更に点検期間が1年と空くために、電池の消耗やデータロガーの容量等が心配である。現地の協力者は、装置の維持には協力できるが、操作には不安が残るので我々の手で行った。又、次回の冬の調査をもってこの研究の最終調査となるため、吹雪防止用のネット柵を持参し、設置方法や測定項目等について現地にて打合せを行った。その他、涎流氷については、氷を止めて貯氷し、それを利用して野菜等を貯蔵することを目的とした、昨年実施した基礎実験である氷残存度の調査やこの次の冬に行う予定の氷の発達過程を追う簡易測定目盛りを設置して、その観測の依頼をしてきた。 9月には、中国側から、趙庁長、孫局長、楽副処長の3人が来日し、北海道大学、新潟大学、富山大学を訪れ、それぞれ研究について情報交換を行った。新潟では、趙庁長による「黒龍江省の道路建設についての将来計画」と題する講演会を行い、環日本海圏に興味をもつ一般の人にも参加を呼びかけた。富山では、日本雪氷学会北信越支部主催による、学習会を開き、楽氏による「涎流氷について」と題して講演を行い、活発な意見交換が行われた。また、中国側は北陸地方の高速道路や防雪施設を視察した。 平成6年2月には、本研究の最終調査が実施された。今冬の黒龍江省は1957年以来の大雪であった。吹雪の常習地羅北は、昨年の暖冬少雪にはたったの2回の吹雪しかなかったが、今冬は10回の吹雪が発生した。従って、夏に設置した吹雪防止用ネットは効果的であった。柵後方の吹き溜りの大きさは、高さ1m,長さ12mであった。これらの精密な断面観測を行った。これから吹雪と気象条件の関係は、無人気象観測装置の1時間毎のデータを解析して明かにする予定である。嘉蔭での涎流氷の発達過程は、夏に依頼した雪尺の測定から冬の前半に急速に成長することが明かになった。3月3日の調査時には、表面を水が流れていた。上、中、下流の3箇所で深さ30cm、直径34.5mmの氷資料をボーリングによって採集した。これらは日本に持ち帰り薄片による顕微鏡観察を行い氷の構造を明かにする予定である。その他、道路積雪の調査や涎流氷防止を目的とした氷貯蔵実験の調査を行った。また、現地に設置した2点の無人気象観測装置はいずれも撤収した。 この研究から、これまでほとんどこの地方で研究がなされなかった大陸性吹雪の実態を明かにする予定である。その結果をふまえて吹雪対策の提言を報告書で行い、現地の住民に還元したい。また、この地方特有な涎流氷については、氷の中を流れる水が過冷却水であることを発見するなど雪氷学の分野に新しい知見をもたらしたことは、大きな収穫であった。なお、氷など持ち帰り詳しい解析や理論的考察を行い、その結果から適切な防止対策についての提言を行うこととする。 この研究はロシアと中国の国境沿いの小興安嶺村付近で行われたものであったが、中国側の協力は友好的に行われた。毎回の調査は凍結路や氷結路を車で150〜2000Kmに及ぶ危険を伴った厳しいものであったが、中国側の行き届いた協力で無事調査を終了することができ幸いであった。総合的な報告書は日本側と中国側の合作で、平成6年度中に刊行する予定である。出版にかかる費用は、研究代表者による委任経理金をもって当てるつもりである。 最後に、問題点を挙げておく。本共同研究を通じて日本側は現象を解明するために基礎的調査に重点を置いたが、中国側は防止対策について強い関心を持っており、日本側からの提言を期待した。しかし、これら雪害に対する防止対策工法には、高額な金がかかり、中国側が期待する金のかからない対策については効め手が無いのが現状である。吹雪対策については、例えば収穫後のトウモロコシの茎を利用してネットの代用として充分に効果がある防止柵が可能であるが、涎流氷に対しては、今の所対策がない。凍上に対しては、冬期間凍結してコンクリートのような道路表面となるので問題はないが融解期には泥々の道路表面となるため問題である。今後の対策には可成りの時間をなお必要とするであろう。
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