研究課題/領域番号 |
04044091
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
相原 茂夫 京都大学, 食糧科学研究所, 助教授 (20027197)
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研究分担者 |
DELUCAS Lawr University of Alabama at Birmingham, Cent, 教授
BUGG Charles University of Alabama at Birmingham, Cent, 教授
中島 将光 (中島 將光) 京都大学, 工学部, 助教授 (60025939)
DELICAS Lawrence J. Center for Macromolecular Crystallography, University of Alabama at Birmingham
LAWRENCE J D University of Alabama at Birmingham Cent, Professor
CHARLES E Bu University of Alabama at Birmingham Cent, Professor
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
8,200千円 (直接経費: 8,200千円)
1993年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
1992年度: 5,100千円 (直接経費: 5,100千円)
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キーワード | 微小重力 / タンパク質 / リゾチウム / 結晶成長 / X線結晶構造解析 / スペースシャトル / 蒸気拡散法 / 宇宙ステーション |
研究概要 |
宇宙の微小重力下でのタンパク質の結晶成長は、溶液中の沈降や対流が抑止されるため、結晶成長におけるタンパク質分子の輸送が拡散律速に従う、すなわち、主としてタンパク質分子間の相互作用によって結晶成長が進行する。そして、結晶成長(結晶核生成過程と結晶成長過程からなる)の結晶核生成過程が律速段階になるため、地上より結晶成長が大幅に遅れるが、生成した結晶核は溶液中であまり移動することなく、その場で成長するので結晶性の良い、単結晶が得られることが予測される。そこで、宇宙の微小重力環境を利用して蒸気拡散法と静置バッチ法により良質のタンパク質単結晶を調製し、地上で得られる結晶と比較することを目的として本研究を行った。 初年度(1992年)はスペースシャトルを利用して2回の宇宙実験(STS-42とSTS-47)を実施し、STS-42では2種類の酵素について実験した結果、リゾチウムの単斜晶を結晶化し、STS-47ではリゾチウムの他に数種のタンパク質の結晶化に成功した。中でも、リゾチウムとω-アミノトランスフェラーゼは結晶学的に良質の単結晶を得ることができた。 次年度(1993年)はスペースシャトル1回、宇宙ステーション1回、計2回の実験を実施した。リゾチウムを中心に宇宙ステーションでは4種類のタンパク質について条件を変えて7種類の結晶を調製することに成功した。また、スペースシャトルでは2種類のタンパク質について1種類の結晶を得ることができた。特に、リゾチウムは異なる結晶化条件で3種類の結晶学的に異なる単結晶を調製することに成功し、X線回折実験により地上の結晶と比較してモザイク性が少ないことを示唆する結果を得た。 以上4回の宇宙実験を実施し、得られた結晶のX線回折実験による解析結果から次のことが結論として挙げられる。 1.微小重力下では結晶成長が緩慢になった。 微小重力下では溶質とタンパク質分子の重量差がほとんどなく、溶液中の対流も生じないので結晶核生成及び結晶成長が拡散律速となることに起因する。 2.結晶核生成時のタンパク質分子の挙動が地上とは異なった。 単結晶の形状が結晶核の特性に依存することを考慮すると、同一の結晶化条件でも宇宙の微小重力下では結晶核表面の電荷分布に強く依存し、地上とは物理的特性の異なる結晶核が成長する確率が高くなる。従って、タンパク質の種類、結晶化の条件に依存して結晶学的特性(外形や結晶格子、結晶性)の異なるタンパク質結晶が晶出し易くなる。 3.宇宙の微小重力下ではモザイク性の少ない良質の単結晶が得られる。 結晶核生成が主としてタンパク質分子表面の物理的特性に依存するような環境ではタンパク質分子の会合がより正確に進行するので、地上の重力場に比較して結晶核内部の分子配列の程度が良くなることが考えられる。動的X線結晶構造解析(ラウエ法)に適した単結晶が得られることが期待される。 4.宇宙の結晶はX線照射に対する損傷を受けやすいが、タンパク質構造上の相違はない。 現在、タンパク質分子全体の構造を明らかにする方法はX線回折法と電子顕微鏡による電子線回折法のみで、しかも、原子レベルの精度で構造決定できる方法としてはX線回折法以外にはない。しかし、この方法ではタンパク質分子の動きを捕えることは不可能で、静的な平均構造しかえられないという限界がある。現在、分子全体の動的構造を明らかする試みとして時分割ラウエ法の研究が進行しているが、これはタンパク質分子全体の構造を動的に捕えることを目的にした解析法である。まだ解決しなければならない問題が残っており、タンパク質の動きを連続的に解析することはなお困難である。地上の結晶に比較して宇宙の微小重力場で晶出したタンパク質単結晶はモザイク構造が少ないので、この解析方法には有効であると判断される。時分割ラウエ法は従来のX線回折法の欠点を補う方法として注目されており、宇宙利用と先端科学技術の開発の接点がこの研究にも存在する。宇宙の結晶を地上に持ち帰ると、地上での結晶の劣化は地上の結晶よりも速い。特に、日本の場合、試料を外国から持ち帰るために時間を要するので、結晶成長を停止させ、安定に輸送できる結晶成長装置の開発が急務である。
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