研究課題/領域番号 |
04044092
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京大学 (1993) 京都大学 (1992) |
研究代表者 |
高橋 智幸 東京大学, 医学部(医), 教授 (40092415)
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研究分担者 |
CULLーCANDY S ロンドン大学, 薬理, 教授
SILVER Angus ロンドン大学, 薬理, 助手
FELDMEYER Di ロンドン大学, 薬理, 助手
小野寺 加代子 東京大学, 医学部(医), 講師 (00053091)
CULL-CANDY Stuart G. University College London, Professor
ANGUS R Silv ロンドン大学, 薬理, 助手
MARK Farrant ロンドン大学, 薬理, 助手
S G CullーCan ロンドン大学, 薬理, 教授
小林 茂夫 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (40124797)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
14,500千円 (直接経費: 14,500千円)
1993年度: 6,600千円 (直接経費: 6,600千円)
1992年度: 7,900千円 (直接経費: 7,900千円)
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キーワード | スライス / 小脳顆粒細胞 / パッチクランプ / NMDA受容体 / EPSC / 個体発生 / Mg^<2+> / 小脳 / 顆粒細胞 |
研究概要 |
実験はすべて生直後一生後4週令のラットの小脳スライスを用いて行った。 1.小脳顆粒細胞NMDA受容体の個体発生 (1)外顆粒層細胞におけるNMDA受容体の存在の発見:NMDA受容体が移動前の外顆粒層の細胞にすでに発現していることが明かとなった。NMDA誘発電流の電位依存性Mgブロックの性質は、一般に知られるNMDA受容体の性質と同様であった。また、アウトサイドアウトパッチにNMDAを投与して得られた単一NMDA受容体は、主レベル50pS、サブレベル40pSとNMDA受容体の典型的な値を示した。NMDA誘発ホールセル電流の振幅から推測されるNMDA受容体の密度は外顆粒層の細胞では内顆粒細胞の約1/3であった。内外顆粒層の中間に位置する移動中の顆粒細胞でのNMDA受容体密度はこれらの中間値をとった。顆粒細胞の移動と平行してNMDA受容体密度が増大すると推測される。NMDA受容体チャネルを介して細胞外からCaが流入し、これが顆粒細胞の移動に役立つものと推察される(以上Farrant et al.,Nature in press他)。 (2)内顆粒層細胞NMDA受容体チャネルの分化:分子生物学的研究により、ラットの小脳顆粒細胞では、NMDA受容体のサブユニットのひとつIIвをコードするmRNAが生後約3週で消失し、これに代わってサブユニットIIсをコードするmRNAが現れることが知られている。両棲類卵母細胞に人工的に発現させたIIв受容体は、50/40pSの典型的単一チャネルコンダクタンスを示すのに対してIIс受容体は30/20pSのコンダクタンスを有することが報告されている。しかし、スイッチングにより期待されるチャネルの性質の変化が生体内で生じるかは明かでなかった。そこで、各日令のラットのスライスの内顆粒細胞からNMDA誘発単一チャネル電流を記録して解析した結果。生後3週以降では明らかに30/20pSチャネルの事象が認められ、成熟と共に発現頻度が上昇することが明らかになった。さらに、30/20pSチャネルは、50/40pSチャネルに比較して速いキネチックスを有することも明かとなった。従って、NMDA受容体サブユニットのIIв/IIсスイッチングによりNMDA受容体が幼若型から成熟型へと分化することが結論された(Farrant,Feldmeyer,Takahashi&Cull-Candy,Nature,in press)。 2.小脳顆粒細胞NMDA性EPSCの分化 NMDA受容体サブユニットのスイッチングにより、シナプス応答の性質にいかなる変化が生じるかを検討した。単一苔状線維を電気刺激して顆粒細胞にEPSCを誘発し、非NMDA成分はブロッカーにより抑制してNMDA成分のみを単離した。細胞外のMg濃度を系統的に変化させて電位依存性Mgブロックの性質を解析した。その結果、生後1-2週令では典型的なMgブロックが認められたが、成熟に伴いMgブロックの程度が減弱する傾向が明かになった。この結果はIIв/IIсスイッチングがシナプスにおいて生じていることを支持するもので、IIв/IIсスイッチングがシナプス応答のMg感受性に変化をもたらすことが直接に証明された。NMDA受容体のMg感受性の減弱は、静止状態で細胞内に流入するCa量の増大につながるため、細胞内Caにより媒介される諸現象、特にシナプスの長期的可塑的変化が生じ易い状況が成熟と共に形成されると解釈される。 3.小脳顆粒細胞非NMDA性EPSCの解析 非NMDA性EPSCは興奮の伝達に直接に関与する重要なシナプス応答である。誘発性EPSCは、通常、より小さなユニットEPSCの複数個により形成される。しかし幼若期の苔状線維顆粒細胞間シナプスでは神経刺激により、単一放出部位に生じるユニットEPSCを神経刺激により誘発することが時に可能である。ユニットEPSCは、外液Ca濃度を下げても平均振幅が一定であることから同定される。これは複数ユニットEPSCの場合、Caの減少によりEPSCの振幅が減少するのと対照的である。ユニットEPSCを解析の結果、振幅の分散係数が約32%であること、また、非定状ノイズ解析の分散-振幅関係が、ほぼ直線的であることが明かになった。直線の傾きから算出されたEPSCを構成するチャネルの平均コンダクタンスはおよそ20pSであった。これらの結果は伝達物質の基本放出単位(素量)は後シナプス受容体を飽和しないことを示唆する。
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