研究課題/領域番号 |
04044094
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
仲野 徹 京都大学, 医学部, 講師 (00172370)
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研究分担者 |
鍔田 武志 京都大学, 医学部, 助教授 (80197756)
ASHBURNER Michael Cambridge University
MAK Tak W. Ontario Cancer Institute, Toronto University
清水 章 京都大学, 遺伝子実験施設, 教授 (00162694)
川市 正史 京都大学, 医学部, 助教授 (00195041)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
1993年度: 3,900千円 (直接経費: 3,900千円)
1992年度: 4,100千円 (直接経費: 4,100千円)
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キーワード | 遺伝子破壊 / 相同遺伝子組替え / 発生 / 胎生期致死 / 転写制御因子 / 胚性幹細胞 / ショウジョウバエ / 末梢神経 / 遺伝子組換え |
研究概要 |
RBP-Jk遺伝子は、マウス免疫グロブリンのJk組み替え配列に結合するタンパクをコードする遺伝子である。しかし、その発現は、免疫系に限局しておらず、広範な組織において発現が認められる。一方、ショウジョウバエの末梢神経系の発生・分化の制御因子であるsuppressor of hairless;Su(H)遺伝子は、RBP-Jk遺伝子と高い相同性を示死、マウスRBP-Jk遺伝子のショウジョウバエ相同遺伝子と考えられている。このことから、RBP-Jk遺伝子は、マウスにおいて、免疫系のみならず神経系なども含めた多様な組織の発生に重要な役割を有しているものと推測される。そこで、本年度は、RBP-Jk遺伝子を破壊したマウスを作製し、そのマウスの発生学的解析を主に行なった。 前年度に作製したRBP-Jk遺伝子の片方のalleleの破壊された胚性幹細胞(ES細胞)を用いて生殖系列キメラを作製し、そのキメラを正常マウスと交配することにより片方のalleleの破壊された突然変異マウスを作製した。一方のalleleの破壊されたマウス(+/-マウス)は、形態学的ならびに免疫学的解析において異常を認めることができなかった。そこで、これらのマウスを交配し、両方のRBP-Jkのalleleが破壊されたマウス(-/-マウス)の作製を試みた。+/-マウスの交配により生まれたマウスの遺伝子型を調べたところ、-/-のマウスを認めることができなかった。このことから、-/-マウスが胎生期致死であることが強く示唆されたので、+/-マウスの交配実験により得られた胎児の遺伝子型を解析した。胎生8.5-9.5日のマウスでは、メンデルの法則どおりに胎児の25%が-/-の遺伝子型を示したが、10.5日ではその頻度が低下し、胎生12.5日では、-/-マウスを認めることができなかった。これらの結果から、RBP-Jk遺伝子はマウスの発生に必須であり、-/-マウスは胎生10日前後において致死であることが明かとなった。 -/-マウスの異常すなわち致死になる原因をさらに詳細に調べるため、それぞれの日数における胎児の形態学的検索を行なった。胎生8.5日のマウスでは、+/+マウスおよび+/-マウスにくらべ、体節数が少なく体長が短かった。特に、尾部の形成が著しく障害されていた。胎生9.5日のマウスでは、正常マウスでは認められる神経管の融合および体軸の回転が認められず、全般的な成長障害は胎生8.5日にくらべて顕著になっていた。胎生10.5日目以降では、個体死によると考えられる個体全体におよぶ変性が認められた。胎生12.5日では、-/-マウスに由来すると考えられる吸収されつつある胎児が認められた。このように、胎生8.5日以後、個体全般におよぶ成長障害が観察された。 組織学的には、胎生8.5日目において著しい成長障害の認められた尾部に硝子様変性が存在した。また、胎生9.5日目において、閉鎖不全のある神経管の細胞に核の凝集が認められた。これらの像は、非特異的なものであり、RBP-Jk遺伝子の欠損が直接的な影響を及ぼしているものかどうかの判定は困難である。 以上のように、マウス個体レベルでの解析が比較的困難であったので、両方のalleleのRBP-Jk遺伝子の破壊されたES細胞の作製を行ない、その細胞を用いてのさらに詳細な解析を試みた。現在十数クローンの-/-ES細胞クローンを作製しており、in vitroにおけるリンパ球への分化誘導実験や、キメラマウスにおいて-/-ES細胞が、どのような細胞系列に分化しうるのかを調べる実験を行なっている。 ショウジョウバエRBP-Jkは、転写調節因子として末梢ならびに中枢神経細胞の発生・分化を制御していることが明かとなりつつある。
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