研究課題/領域番号 |
04044107
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中辻 啓二 大阪大学, 工学部, 助教授 (10029324)
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研究分担者 |
SHIONO Koji Univ. of Bradford, Dept. of Civil Eng., Lecturer
FALCONER Rog Univ. of Bradford, Dept. of Civil Eng., Professor
平田 健正 国立環境研究所, 地域環境研究グループ, 主任研究員 (30093454)
村岡 浩爾 大阪大学, 工学部, 教授 (90029017)
KOJI Shiono Univ.of Bradford, Dept.of Civil Eng., Lecturer
ROGER A Falc Univ.of Bradford, Dept.of Civil Eng., Professor
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
11,100千円 (直接経費: 11,100千円)
1993年度: 6,100千円 (直接経費: 6,100千円)
1992年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
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キーワード | エスチュリー / マングローブ林 / 物質輸送 / 密度流 / 分散 / 三次元数値モデル / 複断面水路 / 残差流 / 河口域 / 流れ / 数値モデル / 3次元 / 成層密度流 / 分散現象 |
研究概要 |
沿岸海域の適正利用のための環境管理や環境創造の政策を立案・決定する過程で、目に見えた形で海域の物理現象を捉え、物質の輸送・分散過程を把握することが第一義的に重要である。対案に対して長所・短所は何か、また、変更により何がどのように変化するかを、対話しながら、目で見て判断するシュミレーションが必須である。わが国の研究者の関心は物理現象の追求に偏り勝ちであり、その成果を社会や行政に還元するための努力は二次的な評価しかされていない。社会的な背景の違いもあろうが、英国では研究成果を誰にでも理解できるように画像処理され、それが行政の政策決定の一資料として利用されている。 本研究では日英で独自に開発してきた数値モデルと画像解析技術を相補的に利用し、さらに乱流計測に基づいて精度の向上を図ることにより、亜熱帯性沿岸湿地帯の流れや物質輸送過程を表現できる数値実験手法の確立、ならびに水環境管理のためのコンピューター支援システムの開発を研究目的として研究を実施した。マレーシア理科大学で行った研究集会と、メルボ-ク河口のマングローブ水域の視察ならびに実測によって、マングローブ特有の物理現象の理解が得られた。また、準備段階も含めて通算7回もの打ち合せの機会を得ることができ、数学モデルの相互理解が円滑に進み、以下に示す成果が得られた。 1.水環境管理のためのコンピューター支援システムの確立と大阪湾の水環境管理への適用: 大阪大学で開発した三次元バロクリニック流れの数値モデルの後処理にBradford大学で開発された対話型画像処理システムを導入することによって、大阪湾の流動や水質構造の三次元構造が色鮮やかな密度分布やベクトル表示した流速分布として図化可能になった。その結果、専門的知識を持ち合わせていない人にも物理現象が容易に理解できるようになった。アセスメントの事例として、大阪湾の15mあるいは18mより浅い海域の埋立を想定した数値実験を行って、人為的な開発行為の影響がどの範囲まで、またどの程度の流速変化や密度変化をもたらすかを可視化で表現できた。その結果、影響の度合を視覚的に、かつ定量的に評価できることが可能となった。さらに、大量の粒子追跡の数値実験により、物質輸送機構に及ぼす恒流や密度流の効果が定量的に評価できるようになった。 2.成層条件下の高次乱流モデルの開発とその検証: 河口・沿岸海域の流動や物質の輸送過程を精度高く表現するためには、高次乱流モデルの適用が必須である。大阪大学で開発した乱流モデル(k-εやASM)をBradford大学に移管し、彼らが長年実施してきたConway河口での実測やレーザー・ドップラー流速計を用いた精度の高い湾口モデルでの乱流計測の結果との比較から乱流モデルの精度の向上を図ることができた。 3.日英で独自に開発した二次元・三次元数値モデルのマングローブ水域への適用とその検証: マレーシア理科大学でマングローブ水域での物質輸送過程に関する研究集会を1993年4月に行い、メルボ-ク河口の視察や現地実測に参画した。また、別途計測されたデータ(水位・流速・塩分濃度・温度・栄養塩類等)の解析から、水域特性のモデル化を図った。その特徴は、クリーク・スオンプス系に見られる一時貯留効果であり、もう一つはクリークの蛇行性である。上流になると3mの水深に振幅約1mの潮汐変化があることから三次元的な取扱いは現状では難しい。そこで、Bradford大学で開発された曲線座標系で計算可能であり、しかも陸域への氾濫水の先端部の挙動を表現できる平面二次元モデルのメルボ-ク河口への適用を試みた。スオンプス内のマングローブ林や木根は河床抵抗の増大として取り扱った。その結果、河口部で観測される流速変動の非対称性や一時貯留された物質の時間遅れの輸送過程をうまく再現できることが分かった。但し、実測データの不足から、上記1.や2.のような水準まで到達していない。実測データの蓄積が必要である。
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