研究課題/領域番号 |
04044109
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
油谷 克英 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教授 (90089889)
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研究分担者 |
PRIVALOV Pet ジョーンズポプキンス大学, 生物カロリメータセンター, 教授
上平 初穂 通産省, 生命工学技術研究所, 室長
杉野 義信 関西医科大学, 教養部, 教授 (00028177)
平賀 香 大阪大学, 蛋白質研究所, 日本学術振興会特別研
PETER L Priv ジョーンズポプキンス大学, 生物カロリメーターセンター, 教授
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研究期間 (年度) |
1992 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
6,700千円 (直接経費: 6,700千円)
1994年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1993年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
1992年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | 熱安定性 / カロリメトリー / 蛋白質の変性 / ヒト・リゾチーム / 超高度好熱菌 / 疎水性相互作用 / 好熱菌 / トリプトファン合成酵素 / 好熱菌酵素 / 耐熱性蛋白質 / カロリメーター / 蛋白質の安定性 / トリプトファンシンターゼ / 熱力学的パラメーター / 変性のエンタルピー / 変性のエントロピー |
研究概要 |
蛋白質は生命現象を司る最も重要な成分である。その蛋白質の生合成過程の研究ならびに機能を持つ蛋白質の作用機作に関する研究は近年めざましい進展を遂げている。しかし、機能発現の土台となる蛋白質の物性とりわけ構造の安定化に関する研究は遅れている。最近、遺伝子操作によって、蛋白質のアミノ酸配列を自由に変換できるようになったが、望みの物性に(例えば熱安定性の高い蛋白質に)変換するためのアミノ酸置換のルールはまだ確立されていない。本研究は蛋白質の立体構造の安定化機構を構成アミノ酸残基の役割に関連づけて解明することを目標にしている。具体的には、(1)高温においては、蛋白質の安定化に及ぼす水和の効果が減少し、安定化の機構解明には系が単純化されるという利点が予測できたので、熱安定性の高い好熱菌蛋白質と、(2)モデル蛋白質としてヒト・リゾチームとその変異型の熱安定化機構に焦点を絞った。研究方法は熱測定の方法を主体にし、蛋白質の熱安定化に関する熱力学的基礎を確立し、蛋白質の安定化の法則性を見いだすことを本研究の目的としている。 (1)超高度好熱菌蛋白質の熱安定化機構 100℃以上に至適温度を持つ超高度好熱菌、Pyrococcus furiosus、が生産する蛋白質の内、αアミラーゼ、ピログルタミルペプチダーゼ(PGP)、及びメチオニンアミノペプチダーゼ(MAP)をコードする遺伝子をpTV118NプラスミドのSalIサイトにクローニングした。これらの3種の蛋白質を大腸菌で大量生産することに成功している。精製された3種の蛋白質の基礎的な物理化学的測定を行った。それぞれの蛋白質の等電点、分子量、CD及び吸収スペクトルの測定を行った。PGPはSS結合を介して2量体を作り、N状態では全体として四量体として存在していることが分かった。他の2種の蛋白質はいずれもモノマーで存在していることがわかった。3種の蛋白質を示差走査熱量計(DASM4)を用いて、種々のpHで熱測定を行い変性の熱力学的パラメータをもとめた。いずれの蛋白質も生理的条件では変性温度が100℃以上となり、常温生物の蛋白質のに比べ50℃以上も高かった。得られた熱力学的パラメータは、常温生物蛋白質から推定できるもの異なり、ここの蛋白質での詳細な検討の必要性を示した。特にPGPの場合、118位のCysが分子間会合をしていることが分かったので、C118S変異型を作製し、野生型との比較を行った。C118S変異型の熱変性は良好な可逆性を示したので今後の解析が期待できる。尚、野生型の異常な熱安定性はCys118の分子間結合によることが分かった。好熱菌蛋白質の熱安定性がSS結合によっているという結果は、これまでの常識に反するものであるが、化学的に不安定なSS結合が超高度好熱菌蛋白質の安定化に重要な役割を果たしていることを示している。更に、PGPの変性と復元の速度論的研究から、PGPの安定化は変性速度の異常な低下に起因していることが分かった。 (2)モデル蛋白質としてのヒト・リゾチーム変異型の研究 モデル蛋白質として、ヒト・リゾチーム変異型、Ile→Val(5箇所:23,56,59,89と106位)とVal→Ala(9箇所:2,74,93,99,100,110,121,125と130位)の14種の変異型を作製し、それらの変異型蛋白質の熱測定とX線結晶解析を行なった。14種の変異型全ての熱変性の熱力学的パラメーターを高性能断熱型示差走査熱量計(DASM4)を用いて求めた。Ile→Val変異型は同じ性質の置換であったが、変性のギブスエネルギーの差は0.4から1.2kcal/molの変化を示した。また、変性のエンタルピー変化は0.6から-6.0kcal/molの変化を示した。これらの結果は同じ性質の置換であっても置換部位構造上の特徴によって種々に安定性へ寄与することを示した。また、大きな変性のエンタルピーの変化はエントロピー項によって相殺され、安定性の変化の程度を低めるのに役立っていることが分かった。同様の結果はVal→Ala変異型においても見られた。 以上述べた成果は日本側で得られたものであるが、親密な研究討議と交流によって双方にとって本研究課題に関する研究が着実に発展させられたと確信できる。
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