研究課題/領域番号 |
04044113
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中川 八郎 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (20029937)
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研究分担者 |
COOPER Jonat Fred Hutchinson Cancer Research Center(U, 室長
PERLMTTER Ro University of Washington(USA), 教授
相沢 慎一 理化学研究所, 副主任 (60073011)
奥村 宣明 大阪大学, 蛋白質研究所, 助手 (20224173)
岡田 雅人 大阪大学, 蛋白質研究所, 助手 (10177058)
永井 克也 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教授 (70029966)
COOPER Jonathan a. Fred Hutchinson Cancer Research Center
PERLMUTTER Roger m. Department of Immunology, University of Washington
ANDRE Veille マッギル大学, 助教授
JONATHAN A C フレッドハッチンソン癌研究所
ROGER M Perl ワシントン大学, 教授
山本 雅 東京大学, 医科学研究所, 教授 (40134621)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
4,600千円 (直接経費: 4,600千円)
1993年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1992年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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キーワード | トランスジェニックマウス / Src型キナーゼ / Csk / 相同組換え / 遺伝子破壊 / CSK / src / tyrosine kinasc / phoshorylation |
研究概要 |
研究目的 Src型キナーゼ(非受容体型チロシンキナーゼ)が細胞の増殖、分化、がん化において重要な役割を演じていることが示唆されているが、それら本来の機能は未だに明確でない。本研究は、Src型キナーゼの活性制御因子であるチロシンキナーゼCskを欠損したマウス、および過剰発現したマウスの作製を試み、その解析を通じて、それら本来の機能を浮き彫りにすることを目的とする。 研究計画 Cskを過剰発現したトランスジェニックマウス、及び、Csk欠損マウスを相同組換え法によって作製し、その表現系、Src型キナーゼの活性、チロシンリン酸化蛋白質を解析する。また、Csk欠損細胞を樹立して、細胞レベルでSrc型キナーゼ、Cskの機能の詳細を検討する。 研究成果 1)トランスジェニックマウスの解析 種々のベクターを用いてCskトランスジェニックマウスの作製を試みたが、Cskを過剰発現するマウスは残念ながら得ることが出来なかった。現在ES細胞を用いたシステムを利用して再検討している。 2)Csk欠損マウスの解析 Csk欠損マウスは、胎生期における劣性致死を示した。胎生8日目まではほぼ正常に発達したが、その後正常マウスで見られる反転が起こらないなど、発達が遅延し、神経管の形成等に形態的な異常が観察された。神経上皮細胞の増殖像も減少し、細胞死が顕著となって胎生10日ころまでに胚死した。異常は神経系組織を中心にして見られ、中胚葉内胚葉由来の組織は比較的健常であった。これらの現象に伴って、胚内ではSrc型キナーゼの活性化が認められ、さらに細胞内チロシンリン酸化蛋白質が顕著に増加していた。 3)Csk欠損細胞の解析 Csk欠損マウスで見られた現象を、分子レベルで解析するために、Csk欠損細胞を樹立した。その細胞では、個体同様Src型キナーゼの活性化、チロシンリン酸化レベルの亢進が確認された。チロシンリン酸化の亢進した蛋白質として、コルタクチン、パキシリンなどが同定された。また、アクチンファイバーの形成不不全、接触阻害能の低下、フォーカルコンタクトの減少、基質との接着能の低下などを示し、部分的ではあるが形質転換様の性質を示した。また一方で、Src型キナーゼの発現のダウンレギュレーションも観察された。 研究の考察 1)Csk欠損マウスの解析 得られた結果は、CskがSrc型キナーゼの必須の制御因子であることを示し、また同時に、Src型キナーゼが発生の初期で重要な役割を演じていることを強く示唆していた。顕著な異常が、Src型キナーゼおよびCskの発現の著しい神経組織に見られ、またSrcの発現が急激に高まる胎生10日前後に致死となることも、それらの機能の場、時期を示唆するものであった。しかし、1)なぜSrc型キナーゼの活性化によって細胞ががん化せずむしろ細胞死が導かれたのか、2)Cskの標的がSrc型キナーゼだけなのか、3)成熟組織でもCskが必須の働きをするのか、そして4)Src型キナーゼの機能は、という問題が残された。 2)Csk欠損細胞の解析 細胞を用いての結果からは、Csk欠損が細胞の部分的ではあるが形質転換を誘導することが示された。それに伴って、v-Srcの基質となるとされている蛋白質の中で、コルタクチン、パクシリンなどのリン酸化が亢進していることが明らかになった。いずれも骨格系の制御との関連性が示唆されている分子であり、生体で見られた現象の一部が細胞骨格系の介在する、細胞間、細胞外基質との接着異常にあることが想像された。しかし、生体レベルでの解析が課題として残されている。 将来への展望 狭義のCskの機能は明白となったが、その標的であるSrc型キナーゼの機能の理解が次の重要課題となってきた。Csk欠損マウスを武器に新たな視点からその問題を解決したい。
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