リンパ球における遺伝子発現制御に関する研究

• 研究課題/領域番号: 04044115
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 共同研究
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 岸本 忠三 大阪大学, 医学部, 教授 (10093402)
• 研究分担者: KINCADE Paul オクラホマ大学, 医学部, 教授 ; BALTIMORE Da ロックフェラー大学, 教授 ; SERCARZ Eli カリフォルニア大学, ロサンゼルス校, 教授 ; MCDEVITT Hug スタンフォード大学, 医学部, 教授 ; 高津 聖志 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10107055) ; 奥村 康 順天堂大学, 医学部, 教授 (50009700) ; 西川 伸一 熊本大学, 医学部, 教授 (60127115) ; 谷口 維紹 大阪大学, 細胞生体工学センター, 教授 (50133616) ; 本庶 佑 京都大学, 医学部, 教授 (80090504) ; 笹月 健彦 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (50014121) ; PAUL W. Kincade Oklahoma Medical Research Foundation, Professor ; DAVID Baltimore Rockefeller University, Professor ; ELI Sercarz University of California, Los Angels, Professor ; HUGH O. McDevitt Stanfor University, School of Medicine, Professor
• 研究期間 (年度): 1992
• 研究課題ステータス: 完了 (1992年度)
• 配分額: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円); 1992年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
• キーワード: リンパ球 / サイトカイン / レセプター / シグナル伝達 / 転写因子 / 遺伝子発現 / 自己免疫疾患 / 主要組織適合抗原

研究概要

当国際学術研究は、日米両国の免疫学・分子生物学研究者による共同研究を目的として遂行された。本年度は(1)日本側研究者2名の米国派遣による調査・共同研究等と(2)福岡市での「免疫制御・寛容の分子機構」に関するシンポジウムの開催による日米両国の研究者の情報交換、研究打合せ等を主として行った。
【1】日本側研究者の派遣 本年度の派遣は次の様に行われた。
(i)研究代表者の岸本忠三は平成4年11月29日から12月5日まで米国に派遣された。ベセスダ市のNIHに於いて、サイトカインレセプターを介するシグナル伝達機構の解明ならびにサイトカイン遺伝子発現制御とその異常による疾病発症メカニズムの解明に関しての情報交換と討論を行い、さらにロサンゼルス市のカリフォルニア大学においてエイズに関する分子生物学的解析の共同研究に関して討論を行った。相手方はそれぞれ当該分野で指導的立場にあるW.E.Paul博士、T.Waldmann博士とO.Martinez-Maza博士である。この派遣により岸本は最新の情報を得ると共に、今後の共同研究の方向性を決定した。
(ii)研究分担者西川伸一は、米国タオス市で開催された「Bリンパ球分化」に関するシンポジウムに平成5年1月31日から2月8日まで派遣された。ここで西川は当国際学術研究の米国側研究分担者のP.KincadeとD.Baltimoreのグループ等この分野の著名な研究者らと情報交換、討論を行った。参加者が600人を越す同会議では、これからのBリンパ球研究の方向を示す興味ある報告が多数なされた。初期分化過程については「VDJ組換えで生ずる染色体の断裂がp53分子を介してB前駆細胞の細胞周期の抑制につながる」という西川の発表を基礎に、数グループとの共同実験がまとめられた。また同会議で公表されたIL-7受容体の機能阻害抗体は下流の情報伝達分子の同定や生体内でのB細胞産生操作への道を開き、それに基づき西川らは、米国側数グループとの共同実験を始めることができた。これらの成果によって、今回の国際学術研究の派遣は実り多いものであったと満足している。
【2】「免疫制御・寛容の分子機構」に関するシンポジウムの開催
本シンポジウムは平成5年3月2日と3日に福岡市で開催された。発表演題は当国際学術研究の代表者と分担者によるものを含み日本側9題、アメリカ側8題で、一流の研究者達の最新の研究成果の発表と討論が活発に行われた。研究者達は演題発表の場に滞まらずレセプション等を通じて精力的に情報交換を行った。このシンポジウムは、ディスカッサントとして当国際学術研究が参加を呼びかけたこの分野の指導的日本人研究者及び聴衆として参加した若手研究者の計約120名に対しても、最新の情報を獲得し第一線の研究者と交流する貴重な機会を提供することができた。
2日間にわたったこのシンポジウムはI.リンパ球活性化とレパトア選択、II.転写因子とリンパ球の発生、III.リンパ球活性化に於けるシグナル伝達、の3つのサブテーマについて順に講演と討論が行われた。テーマIでは、本庶佑が自己反応性Bリンパ球の不活化について表面イムノグロブリンからとbcl-2癌原遺伝子からとの2つのシグナルをもとに議論を行った。笹月健彦は、リンパ球レパトア選択における主要組織適合抗原の役割についてトランスジェニックマウスを駆使した解析を行った。奥村康はリンパ球相互作用と活性化に関わる機能的抗原LFAについて講演した。高津聖志はB細胞活性化におけるIL-5の役割について論じた。テーマIIでは、D.Baltimoreが免疫系を司る遺伝子の転写を制御する因子群NF-кBファミリーについて発表を行った。テーマIIIでは岸本忠三がサイトカインに共通なシグナル伝達蛋白gp130と転写因子NF-IL6を通じたシグナルについての詳細な研究成果を公開した。
研究者の派遣とシンポジウム開催を上述の如と成功裡に遂行した当国際学術研究は、日米両国の一流の研究者の共同研究と情報交換という当初の目的を十分に果たすことができた。これにより同分野の将来の研究の方針決定や若手研究者の啓蒙といった効果も得られたと確信する。

研究成果

• [文献書誌] Kishimoto,T.,S.Akira,and T.Taga: "Interleukin-6 and receptor:A paradigm for cytokines" Science. 258. 593-597 (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Murakami,M.,T.Tsubata,M.Okamoto,A.Shimizu,S.Kumagai,H.Imura,and T.Honjo.: "Antigen-induced apoptotic death of Ly-1 B cells responsible for autoimmune disease in transgenic mice." Nature. 357. 77-80 (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Shibuya,H.,M.Yoneyama,J.Ninomiya-Tsuji,K.Matsumoto,and T.Taniguchi: "IL-2 and EGF receptors stimulate the hematopoietic cell cycle via different signaling pathways:Demonstration of a novel role for c-myc." Cell. 70. 57-67 (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Kodama,H.,M.Nose,Y.Yamaguchi,J.Tsunoda,T.Suda,S.Nishikawa,and S.Nishikawa: "In vitro proliferation of primitive hemopoietic stem cells supported by stromal cells:Evidence for the presence of a mechanism(s)other than that involveing c-kit receptor and its ligand." J.Exp.Med.176. 351-362 (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Hatae,K.,A.Kimura,R.Okubo,H.Watanabe,H.A.Erlich,K.Ueda,Y.Nichimura,and T.Sasazuki: "Genetic control of nonresponsiveness to hepatitis B virus vaccine by an extended HLA haplotype." Eur.J.Immunol.22. 1899-1905 (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Murata,Y,.S.Takai,M.Migita,Y.Kikuchi,A.Tominaga,and K.Takatsu: "Molecular cloning and expression of the human interleukin 5 receptor." J.Exp.Med.175. 341-351 (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Kishimoto, T.,S.Akira, T.Taga: "Interleukin-6 and its receptor : A paradigm for cytokines." Science. 258. 593-597 (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Murakami, M., T.Tsubata, M.Okamoto, A.Shimizu, S.Kumagai, H.Imura, and T.Honjo: "Antigen-induced apoptotic death of Ly-1 B cells responsible for autoimmune disease in transgenic mice." Nature. 357. 77-80 (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Shibuya, H., M.Yoneyama, J.Ninomiya-Tsuji, K.Matsumoto, and T.Taniguchi: "IL-2 and EGF receptors stimulate the hematopoietic cell cycle via different signaling pathways : Demonstration of a novel role for c-myc." Cell. 70. 57-67 (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Kodama, H., M.Nose, Y.Yamaguchi, J.Tsunoda, T.Suda, S.Nishikawa, and S.Nishikawa: "In vitro proliferation of primitive hemopoietic stem cells supported by stromal cells : Evidence for the presence of a mechanism(s) other than that involving c-kit receptor and its ligand." J.Exp.Med. 176. 351-362 (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Murata, Y., S.Takai, M.Migita, Y.Kikuchi, A.Tominaga, and T.Takatsu: "Molecular cloning and expression of the human interleukin 5 receptor." J.Exp.Med. 175. 341-351 (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より