研究課題/領域番号 |
04044122
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
土屋 友房 岡山大学, 薬学部, 教授 (80012673)
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研究分担者 |
WILSON Thoma ハーバード大学, 医学部, 教授
黒田 正幸 岡山大学, 遺伝子実験施設, 助手
津田 正明 岡山大学, 薬学部, 助教授 (80132736)
THOMAS H.Wil ハーバード大学, 医学部, 教授
富田 由妃 岡山大学, 薬学部, 助手 (10243487)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
6,100千円 (直接経費: 6,100千円)
1993年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
1992年度: 3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
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キーワード | 輸送機構 / カチオン共役 / 輸送タンパク質 / 輸送制御 / 輸送系の構造 |
研究概要 |
細胞膜における物質の能動輸送においては、カチオン循環が重要な役割を担っている。本研究では、カチオンと基質のシンポート系、および共輸送系の駆動力となるカチオンの電気化学的ポテンシャルの形成に重要なカチオン/カチオンアンチポート系について解析した。特に、細胞生理学的、生化学的、および分子遺伝学的な面から解析した。 主として、カチオン(Na^+、H^+、Li^+)/基質シンポート系の一つであるメリビオース輸送系と、Na^+(Li^+)/H^+アンチポート系について、構造と輸送機構および輸送制御機構の関係を明らかにすべく解析を行い、以下のような成果を得た。 私達が構造を明らかにしすでに報告している大腸菌とネズミチフス菌のメリビオース輸送系の遺伝子であるmelBについて、遺伝子操作などにより種々の変異体を作成し、メリビオース輸送タンパク質のアミノ酸残基の置換と輸送機能の変化の関係を明らかにした。こうして、カチオン共役に重要なアミノ酸残基、基質認識に重要なアミノ酸残基などが明らかになった。また、このタンパク質の温度感受性に関与するアミノ酸残基をいくつか同定した。このような解析の過程で、プロリン残基がセリン残基に置換することにより種々の変化が生ずることが多いという事実が明らかになった。そこで、ネズミチフス菌のメリビオース輸送タンパク質の17個のプロリン残基のすべてについて、1つ1つセリン残基に置換したものを部位特異的変異導入法により作成した。それらの変異型メリビオース輸送タンパク質を有する細胞について、メリビオースでの生育、メリビオース輸送能、カチオン共役、その他の性質の変化について解析した。その結果、個々のプロリン残基の役割に関する知見が得られた。また、12個の膜貫通領域の内、いくつかのものについて、構造上の特徴や機能上の役割が明らかになった。 一方、これまでに解析されている大腸菌、ネズミチフス菌、クレブジエラの他に、腸内細菌属のエンテロバクターとシトロバクターにもメリビオース輸送系が存在することを見い出した。特にシトロバクター・フロインディにおいては、野生株ではメリビオース利用系が発現していないが、かなり高頻度でメリビオース利用可能となった変異株が得られることがわかった。これらの細菌のメリビオース輸送系におけるカチオン共役について解析し、その特徴を明らかにした。現在エンテロバクターとシトロバクターのメリビオース輸送系遺伝子melBのクローニングを行っている。それらのメリビオース輸送タンパク質の一次構造と性質の関係から、ドメインと機能に関する更なる知見が得られるであろう。 Na^+/H^+アンチポーターについても、細胞生理学的、生化学的、および分子遺伝学的な面から解析した。特に、大腸菌のNhaA系とNhaB系について、それぞれを欠損する株および両者を欠損する株を分離・構築し、それぞれの系の細胞生理学的役割を明らかにした。また、腸炎ビブリオのNa^+/H^+アンチポーターについては、遺伝子面からの解析により、構造と機能の関係を明らかにすることができた。 一方、ホスホトランスフェラーゼ系による輸送制御については、制御を受けなくなったいくつかのネズミチフス菌変異株を分離・解析し、この輸送制御には、メリビオース輸送系のC末端領域が特に重要であることを明らかにした。この領域のAsp438,Arg441,lle445の三つの残基が特に重要であることがわかった。また、この領域はα-ヘリックス構造を取り、これらの残基はその同じ面に存在することが示唆された。すなわち、制御因子であるファクターIIIは、このα-ヘリックスの一つの面から結合することにより輸送タンパク質の機能を制御するものと思われる。なお、細胞質側に大きく突出しているセントラル・ループ領域については、この領域のアミノ酸残基の欠損や置換の実験結果から、この領域は輸送制御にはあまり関係ないことがわかった。また、C末端領域を順次欠損させたメリビオース輸送タンパク質を用いた実験から、C末端から20〜23番目のアミノ酸残基が活性と輸送制御に特に重要であること等がわかった。
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