研究分担者 |
SHIOZAWA Jud マックス, プランク生化学研究所, 研究員
LOTTSPEICH F マックス, プランク生化学研究所, 教授
OESTERHELT D マックス, プランク生化学研究所・所長, 教授
守谷 智恵 岡山大学, 薬学部, 助手 (60253001)
大塚 正人 岡山大学, 薬学部, 助手 (30243489)
池田 己喜子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (20112154)
SHIOZAWA Judith a. Max-Planck-Institute of Biochemistry
JUDITH A. Sh マックス, プランク生化学研究所・膜生化学部門, 研究員
FRIEDRICH Lo マックス, プランク生化学研究所・遺伝子センター, 教授
DIETER Oeste マックス, プランク生化学研究所・膜生化学部門, 教授
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研究概要 |
1.カサノリCl^-輸送性ATPaseについて (1)b(50kDa)サブユニットのクローニング:total RNA及びpoly(A)^+RNAのRT-PCRにより,重複した領域をもつ4つのクローンpCLB1〜4を得た。塩基配列決定の結果,一次構造は478アミノ酸より成り,分子量は51,513であった。既報のカチオン輸送性ATPaseとの比較により,FタイプATPase,βサブユニットなかでもクラミドモナスCF_1-βに最も高い相同性を示した。 (2)a(54kDa)サブユニットのクローニング:N末端から約50%をコードするクローンpCLA1(803bp)を得た。そのアミノ酸配列はホウレンソウCF_1-αサブユニットと約75%の相同性を示した。 (3)RNAレベルでの発現の解析:カサノリから,CF_1-βサブユニット及びMF_1-βサブユニットをコードする可能性の高い遺伝子断片(それぞれ,273,332bp)を得た。塩基配列の比較により,(1)で得たCL^--bサブユニットのクローンとは異なる事,即ち,カサノリにはFタイプATPase,β様遺伝子が3種類存在する事が明らかとなった。これら3種類をプローブとしてノザーン解析を行った。Cl^--b由来の断片をプローブとした場合,10kb以上,7.5及び3.8kbのメッセージが検出された。CF_1-β,MF_1-β断片をプローブとした場合,約2.2kbのRNAが検出された。 CF_1-αサブユニットをコードする可能性の高い遺伝子断片(260bp)を得た。pCLA1とは塩基配列で約77%の一致がみられたが,異なるクローンであった。両者をプローブとしてノザーン解析を行った結果,約3.2kb(Cl^--a)及び約2.4kb(CF_1-α)の大きさの異なるメッセージが検出された。 上記の結果から,Cl^--ATPaseはATPase familyのなかではFタイプATPaseに属するものであるといえる。しかしながら,カサノリにはCF_1-及びMF_1-ATPaseがそれぞれ存在する事が証明された。即ち,FタイプATPaseがsmall multigene familyを形成し,それぞれのオルガネラで発現され,アニオン・カチオン輸送を担っている可能性の高いことが示唆された。 2.カサノリsulfate permeaseについて (1)細胞レベルでの硫酸イオンの取り込み:硫酸イオンを除いた人工海水中でカサノリ(3〜4cm長)を一晩培養し,^<35>SO^<2->_4の取り込み能を調べたところ,約3〜4倍の取り込み能の上昇を観察した。 (2)遺伝子クローニング:cDNAライブラリーの直接増幅によりcysA(ヌクレオチド結合モチーフをもつサブユニット)遺伝子断片(359bp)を得た。そのアミノ酸配列はシアノバクテリアCysA蛋白質と比べ,54.6%の残基が一致するものであった。total RNAのRT-PCRによりsbp(ペリプラスム局在の可溶性蛋白質をコード)遺伝子断片(552bp)を得た。そのアミノ酸配列は大腸菌SBP蛋白質と比べ,約97%の残基の一致がみられた。その他のサブユニット,膜蛋白質CysT及びCysWの候補クローンの塩基配列を決定したが,大腸菌の各サブユニットに対する相同性は低いものであった。現在,クローニングを続行している。 (3)ノザーン解析:cysA及びsbp遺伝子断片をプローブとしてノザーン解析を行った。それぞれ,約2.4及び1.55kbのメッセージが検出され,RNAレベルでの発現を確認した。 3.カサノリmaltose permeaseについて:2-(2)で得たcysA遺伝子断片の他に,同一のオリゴヌクレオチドで増幅される369bpの遺伝子断片を得た。そのアミノ酸配列は,大腸菌Malk蛋白質と51%の残基が一致するものであった。ノザーン解析の結果,約1.65kbのメッセージが検出された。 上記2及び3の結果は,カサノリにATP-binding cassette(ABC)タイプのATPaseが存在する事を支持するものである。又,バクテリアに特有なperiplasmic permeaseが植物に認められた最初の例である。
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