研究課題/領域番号 |
04044135
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高津 聖志 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10107055)
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研究分担者 |
テルホルフート コックス ハーバード大学, 教授
キンケード ポール オクラホマ医学研究センター, 部長
メルシャーズ フリッツ バーゼル免疫研究所, 所長
等 泰道 東京大学, 医科学研究所, 助手 (10222241)
木梨 達雄 東京大学, 医科学研究所, 助手 (30202039)
MELCHERS Friz BASEL INSTITUTE FOR IMMUNOLOGY Director
KINCADE Paul OKLAHOMA MEDICAL RESEARCH INSTITUTION Head
YASUMICHI Hitoshi THE INSTITUTE OF MEDICAL SICENCE Assistant Professor
TERHORS Cox BETH ISRAEL HOSPITAL,HARVARD MEDICAL SCHOOL Professor
COX Terhorst ハーバード大学, 医学部, 教授
PAUL Kincade オクラホマ医学研究センター, 部長
FRITS Melche バーゼル免疫研究所, 所長
高木 智 東京大学, 医科学研究所・免疫学研究部, 助手 (10242116)
片桐 拓也 東京大学, 医科学研究所・免疫学研究部, 助手 (70126100)
コックス テルホルスト ハーバード大学, 医学部, 教授
ポール キンケード オクラホマ医学研究センター, 部長
フリッツ メルシャーズ バーゼル免疫研究所, 所長
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研究期間 (年度) |
1992 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
8,500千円 (直接経費: 8,500千円)
1994年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
1993年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
1992年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
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キーワード | IL-5 / B細胞分化 / サイトカイン / 伴性免疫不全 / チロシンキナーゼ / Btk / IL-5レセプター / JAKキナーゼ / 好酸球 / 免疫不全 / IL-5受容体 / タンパク質リン酸化 / レセプターのクロストーク / トランスジェニックマウス / IL-3 / GM-CSF |
研究概要 |
B細胞は骨髄中の多能性幹細胞にみなもとを発し、骨髄支持細胞やサイトカインによる刺激により増殖しIgH遺伝子の再構成をへてB前駆細胞となる。その後L鎖遺伝子の再構成をへて抗原レセプターを細胞表面に発現し成熟B細胞となる。成熟B細胞の生存、活性化、免疫記憶は胚中心で活発であり、ここでB細胞は抗体産生細胞に最終的に分化し骨髄に移行する。本研究は、B細胞の初期発生に関与するサイトカイン分子の構造の専門家、成熟B細胞の増殖・分化に関与するサイトカイン研究の専門家、および細胞内のシグナル伝達研究の専門家が国際的に共同研究し、抗原受容体やその関連分子、IL-5レセプターを会するシグナル伝達系を分子レベルで解明することを目的としている。本研究期間に、当初の研究目標を達成し以下のことを明らかにできた。 (1)IL-5はB細胞や好酸球の増殖や分化を促進するが、それは高親和性IL-5Rレセプター(IL-5R)を介して標的細胞内に伝達される。機能的なマウスIL-5RはIL-5結合分子であるα鎖とシグナル伝達分子であるβ鎖より構成される。β鎖は単独でIL-5結合性を示さないがIL5/IL-5Rα鎖複合体に結合し低親和性IL-5Rを高親和性に変換するのみならず、シグナル伝達に必須である。β鎖はIL-3やGM-CSF受容体のβ鎖としても機能する。IL-5とIL-3に反応性の株化細胞をIL-5やIL-3で刺激後細胞内蛋白質のチロシンリン酸化と活性化されるチロシンキナーゼの同定をし、それらの活性化に必須のIL-5Rα鎖の機能ドメインを検索し、以下のような成果を得た。(i)IL-5刺激後速やかにIL-5Rβ鎖を含む5種類以上の細胞内タンパク質のチロシン残基の燐酸化が惹起された。これまでに増殖因子受容体系のシグナル伝達に関与すると考えられていたタンパク質で分子内にSH2やSH3ドメインを有するもののうち、Vav,Shc,PI-3 kinase,HS1などのチロシン残基がIL-5刺激に対応し速やかにリン酸化されることがわかった。(ii)B細胞特異的な細胞内チロシンキナーゼであるブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)やJAKキナーゼの活性化が惹起された。(iii)c-myc,c-fos,c-junなどのプロトオンコージーンの発現増強が惹起された。これらのことより、IL-5刺激に対応しRas→Raf→MAPKKK
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→MAPKK→MAPKカスケードの活性化、PI-3 kinaseを介するシグナル伝達径路、BtKの活性化やHS1とLynのリン酸化が関与する経路。JAK2 kinaseの活性化を伴うシグナル伝達系などを介して、最終的にc-fos,c-jun,c-mycなどのプロトオンコンジーンの活性化がおこり、細胞の増殖や分化が誘導される可能性が示唆された。我々はBtkの活性化を伴うシグナル伝達系に特に注目しIL-5R系にユニークなシグナル伝達系を解析している。 (2)我々はこれまでIL-5Rα鎖の細胞内ドメインがIL-5シグナルの伝達に関与していることを示してきた。IL-5Ra鎖細胞膜直下のプロリン(6アミノ酸のうち4個がプロリン)残基に富む領域のIL-5シグナル伝達における関与を明らかにするため、6アミノ酸を欠失した4種類(DC1〜DC4)の変異α鎖cDNAを調整しβ鎖を構成的に発現しているFDC-P1に遺伝子導入し、トランスフェクタントのIL-5との結合親和性とIL-5応答性を調べ、以下の結果を得た。(i)野生型IL-5Rα鎖を発現しているFDC-5R,DC1〜DC4はいずれも高親和性IL-5Rを発現していた。DC1(プロリンに富む領域を欠失)とDC2(プロリンに富む領域の近傍で塩基性や酸性アミノ酸を含む領域を欠失IL-5刺激により増殖しないが、DC3,DC4(C-末端側の6アミノ酸を欠失)は野生型α鎖を発現させたFDC-5Rと同程度にIL-5に応答して増殖した。またJAK2のチロシン残基のリン酸化も惹起された。(ii)α鎖の細胞内ドメインのプロリン残基に富む領域(Pro-Pro-X-Pro)がシグナル伝達(増殖、JAK2のリン酸化、プロトオンコンジーンの発現誘導)に必須であること、3個のプロリン残基のすべてに点変異を導入するとIL-5刺激を伝達できないこと、両末端のいづれかのプロリン残基があればシグナルは十分に伝達されることがわかった。(iii)IL-5Rα鎖(細胞外ドメイン)とβc(細胞膜および細胞内ドメイン)のキメラレセプターをbcとともに発現させても細胞はIL-5に応答性を獲得することから、IL-5Rα鎖はβcの細胞内ドメインの多量化(multimerization)を惹起させるのに必要であることがわかった。 (3)Btk遺伝子に変異のあるXIDマウスはB細胞選択的にIL-5に低応答性を示す。XIDマウスでのB細胞特異的なIL-5レセプターを介するシグナル伝達系の異常を解析するため、IgH鎖エンハンサンサーをIL-5Rα鎖cDNAに連結した遺伝子をC57BL/6マウス受精卵に微量注入し、常法によりトランスジェニックマウス(5Rα-Tg)を作製した。この雄マウスを雌のXIDマウスと交配し、得られたF1マウスの雄(XID-5Rα-Tg)ならびに同腹雌(5Rα-Tg)マウスを実験に用い、以下のことを明らかにした。(i)5Rα-TgマウスのすべてのB細胞はリコンビナントIL-5Rα鎖を発現しており、より効果的にIL-5に応答した。(ii)XID-5Rα-TgマウスのB細胞も5Rα-TgマウスのB細胞と同じようにすべてIL-5Rα鎖を発現していた。腹腔内ならびに脾臓内B細胞のIL-5応答性をDNA合性を指標に調べたところ、XID-5Rα-TgならびにXIDマウスのB細胞はIL-5に応答しなかった。また、TNP-Ficollに対する応答性も見られなかった。(iii)XID-5Rα-TgマウスのB細胞は至適量以下のIL-5とLPSに応答しDNA合性とIg産生を示したが、XIDマウスのB細胞ではいづれも観察されなかった。以上の事実はXIDマウスではIL-5シグナル伝達系に以上があり、それはIL-5Rα鎖を強制的に発現させても回復しないことを強く示唆している。またIL-5Rα鎖を強制的に発現させてもXIDマウスでみられるB細胞機能異常は改善されないことも初めて示された。 (4)胚中心B細胞はPNAにより染色されるが、B細胞の生存を延長させるIL-5とCD38に注目し、それらが胚中心B細胞上に発現されているのかを抗IL-5Rα鎖抗体と抗CD38抗体を用いた組織染色法で調べた。その結果、一部の胚中心B細胞がIL-5Rα鎖ないしCD38を発現しており、両分子をともに発現しているB細胞も検出された。XIDマウスのB細胞はIL-5に応答しないが、XIDマウスの胚中心にもIL-5Rα鎖ないしCD38を発現しているB細胞の存在が確認された。 (5)脾臓B細胞を抗CD38抗体で刺激すると有意な増殖反応が見られたがIg産生は見られなかった。その系にIL-5を共存させると増殖反応は10倍以上増加し、Ig産生が見られるようになった。両刺激によりB細胞の生存が延長された。 (6)IL-5Rα鎖の染色体遺伝子を単離しその全構造を明らかにした。マウスIL-5Rα鎖の染色体遺伝子は11エクソンから構成されており、6番の染色体上にマップされた。 隠す
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