研究分担者 |
SAPRU Hreday ニュージャージー医科歯科大学, 医学部・ニュージャージー校, 教授
KRIEGER Abbo ニュージャージー医科歯科大学, 医学部・ニュージャージー校, 主任教授
中井 正継 国立循環器病センター, 研究所, 室長 (90150226)
松裏 修四 大阪市立大学, 医学部, 教授 (50047007)
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研究概要 |
延髄心臓血管中枢の最重要領域である孤束核(nucleus tractus solitarius,NTS)、尾側腹外側降圧野(caudal ventrolateral depressor area,CVL)、吻側腹外側昇圧野(rostral ventrolateral pressor area,RVL)が脳血管収縮機能を持っている事を既に国際共同研究として報告していた。これらの領域の脊髄循環への役割は不明であったので、平成4年度は吻側腹外側昇圧野(RVL)の神経細胞が脊髄循環へ及ぼす役割を検討した。 1.RVLへL-glutamate(100nl,1.7-5.0nmole)を微量注入し、脊髄血流の変化を調べた(n=12)。脊髄血流量は、頚髄では27±3より20±2(mean±SE)(P〈0.01)へ、胸髄では22±1より17±2(P〈0.05)へ、腰髄では41±5より26±3ml/100g/min(P〈0.05)に各々有意に低下した。脊髄血管抵抗は、頚髄では3.7±0.4より5.0±0.6(P〈0.05)に、胸髄では4.2±0.2より5.9±0.7(P〈0.05)に、腰髄では2.5±0.2より3.8±0.4mmHg/〔ml/100g/min〕(P〈0.05)に各々有意に上昇した。 2.1の実験の際、同時に腎臓の血流量を測定した(n=12)。腎血流量は有意に(P〈0.01)低下し、腎血管抵抗は有意に(P〈0.05)上昇した。これにより、RVLへL-glutamateを微量注入した効果が有効である事が裏付けられた。 3.RVL近接野へのL-glutamate微量注入では、脊髄血流量、脊髄血管抵抗は有意な変化を示さなかった(n=5)。 4.RVL化学刺激中の脊髄血管のPaCO_2に対する血管反応性は保たれていた(n=5)。 5.組織学的検討をし、刺激部位がRVLである事を確認した(n=5)。 以上の結果よりRVL内の神経細胞は脊髄循環を血管収縮性に調節している事が判明した。 (Maeda,Krieger,Nakai,Sapru:J Auton Nerv Syst 39:151-158,1992)平成5年度は、延髄孤束核(NTS)よりの脳血管調節の脳内神経経路を明らかにするため、尾側腹外降圧野(CVL)と吻側腹外側昇圧野(RVL)との脳循環調節の脳内神経経路を調べた。 1.CVLをL-glutamate(100nl,1.7nmole)の微量注入により化学刺激し脳血流の変化を調べた(n=9)。刺激と同側の大脳皮質の血流量は64±9より48±9ml/100g/min(mean±SE)に有意(P〈0.01)に低下し、脳血管抵抗は1.7±0.2より2.4±0.4mmHg/〔ml/100g/min〕へと有意に(P〈0.01)上昇した。 2.両側頚部交感神経を切断した後1の実験と同様の方法でCVLを化学刺激し脳血流の変化を調べると、脳血流量・脳血管抵抗は有意な変化を示さなかった(n=10)。 3.muscimol(500pmole)を一側RVL(交感神経の脳内origin)に注入しその部の神経細胞のみの活動を阻害した後、1の実験と同様の方法でCVLを化学刺激し脳血流の変化を調べた(n=11)。脳血流量・脳血管抵抗は有意な変化を示さなかった。 以上の結果よりCVLによる脳循環の調節はRVLと頚部交感神経を介している事が判明した。RVLもCVLと同様に脳血管収縮機能を持っている事が私達が国際共同研究により既に明らかにしているので、CVLよりRVLへは脳循環に関しては交感神経興奮性経路がある可能性が示唆される。また、NTSよりCVLへ交感神経興奮性経路がある事は既に国外研究分担者(H.N.Sapru)らを始めとして多くの研究者より明らかにされているので、NTSによる脳血管調節はその脳内神経経路としてCVLとRVLを介し、頚部交感神経を通じて行なわれている可能性が推測された。 (Maeda,Hayashida,Nakai,Krieger,Sapru:J Auton Nerv Syst Suppl 1994 in press)
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