研究課題/領域番号 |
04044176
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 岡崎国立共同研究機構 |
研究代表者 |
藤田 善彦 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 教授 (40013560)
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研究分担者 |
ANASTASIOS M カリフォルニア大学, バークレー校, 教授
相澤 克則 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助手 (20249957)
大城 香 東海大学, 海洋学部, 教授 (90101104)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
5,600千円 (直接経費: 5,600千円)
1994年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1993年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1992年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | クラミドモナス / クロロフィル合成 / ドナリエラ / 光適応 / 光合成 / 光化学系I / たん白合成 / 環境適応 / 系I・系II比 / クロロフィル / 光環境適応 / 光化学系工 / 蛋白合成 |
研究概要 |
酸素発生を伴う光合成では、2つの光化学反応系、PS I、PS II、によって駆動される電子伝達反応により光エネルギーが生化学エネルギー、ATP、NADPH、に変換される。従って、PS IとPS IIがバランス良く活動する事がエネルギー変換効率を高いレベルで維持する上に欠く事が出来ない。このバランスを保つ調節機構として、PS I、PS IIたん白複合体の量比の調節が存在する事を、我々はラン藻について見出し、電子伝達系の末端のPSIの量が合成制御を通じて調節される事を明らかにして来た。一方、カリホルニア大学のMelis教授らは、同じ調節現象を高等植物について見出し、研究している。この調節現象は、従来知られていない新しい現象であるので、酸素発生を伴う光合成一般の調節機構を意味するのか疑問であった。そこで、2つのグループが共同して、ラン藻と高等植物とは異なる系統門に属する緑藻クラミドモナスについて、この種の調節の有無、また、ラン藻での機構との異同を解析するべく、本研究を計画した。 緑藻Chlamydomonas reinhardtii C137(+)株を本研究の対象生物とした。PS II励起偏重光としてChl bを主として励起する光(PS II光)と、長波長型Chl aを主として励起する光(PS I光)を培養光として選択して、光合成依存の独立栄養培養を行った。それぞれの生育条件下の細胞は、同じ生育速度になる様に光強度を調節したにもかかわらず、細胞サイズが2〜3倍 PS I光下で小さくなった。従って、細胞当たり(葉緑体当たり)のPS I、PS II量はいずれもPS I光生育細胞で小さくなった。しかし、PS I、PS II、およびCyt b_6-fの量比を求めると、PS I/PS II比は大きく変動し、PS I光生育細胞の値はPS II光生育細胞のそれの約1/2であったのに反し、Cyt b_6-f/PS II比は両細胞ともほぼ同じ値をとった。(1.0)。この変化パターンはラン藻の場合と同じで、PS I量がPS I光下で減少し、PS II光下で増加する事を示す。 このPS I量の変動と共に、LHC II量の変化も起こった。PS II光生育細胞でLHC II/PS II比が高く、PS I光生育細胞で、その1/2程度まで減少した。これは、同じタイプのLHC IIを持つ高等植物では認められなかった現象である。LHC Iについても調べた所、同様に減少していた。高等植物で、Chl a合成を抑制すると、LHC IIとPS I合成が選択的に抑制される事が判っており、PS I光下ではPchlide光還元が起こらず、Chl aの合成が抑制される可能性があるので、このためにPS I/PS II比が変化したとも考えられる。しかし、Pchilde光還元を誘記する青色光下でもPS I量は減少する事、また、この時LHC量は増加する事からPS I/PS II比の変化はChl a合成抑制とは関係ないと結論された。PS II光からPS I光への光シフト時のPS I、PS II、LHC II量の変化を追跡した所、PS Iは増加が停止あるいは減少したが、LHC IIは遅いながら増加を続けた。この事実もPS I光下での,PD I量の減少とLHC量の減少は異なった仕組みで起こる事を示す。しかし、Pchlide含量は、PS I光生育細胞で有意に高いので、Pchlide明還元がPS I光下で抑制されているのも事実で、LHC量の減少の原因と考えられる。 PS I、PS II光生育細胞について、それぞれの生育光へのPS I/PS II比順応前後の光合成収率を調べて見た。PS I/PS II比が順応すると、順応前の1.5〜1.7倍まで収率が向上される事が判った。従って、この場合のPS I/PS II比の変化も光合成効率の維持に寄与していると結論された。 以上のように、緑藻Chlamydomonas reinhardtiiにおいても、ラン藻の場合と同様に、PS I量の調節により、PS I/PS II比が調節され、光合成収率を維持している事が本研究を通じて明らかにされた。この結果は、高等植物からラン藻までの言わゆる緑色植物系統の光合成の一般的な調節現象として、PS I/PS II変化が起こるものである事を強く示唆する。15EA06:しかし、PS I励起偏重光はPchlide光還元に不活性である。従って、Pchlide暗還元能を欠く高等植物でのPS I/PS II比調節の解析では、この点を充分再検討する必要がある事を本研究の結果は示している。
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