研究課題/領域番号 |
04044177
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 岡崎国立共同研究機構 |
研究代表者 |
長濱 嘉孝 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 教授 (50113428)
|
研究分担者 |
LOHKA Manfre カルガリー大学, 助教授
MALLER James コロラド大学, ハワードヒューズ医学研究所, 教授
山下 正兼 北海道大学, 理学部, 助教授 (30202378)
田中 実 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助手 (80202175)
吉国 通庸 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助手 (50210662)
IZUMI Tetsuro University of Colorado, Postdoctoral Fellow
NODA Youichi University of Kyoto, Associate Professor
野田 洋一 京都大学, 医学部, 助教授 (50115911)
MANFRED J Lo カルガリー大学, 生物学教室, 助教授
JAMES L Mall コロラド大学, ハワードヒューズ医学研究所, 教授
|
研究期間 (年度) |
1992 – 1993
|
研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
|
配分額 *注記 |
7,600千円 (直接経費: 7,600千円)
1993年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1992年度: 4,100千円 (直接経費: 4,100千円)
|
キーワード | 卵成熟 / 脊椎動物 / 哺乳類 / 両生類 / 魚類 / 卵成熟促進因子(MPF) / 卵成熟誘起ホルモン(MIH) / リン酸・脱リン酸化 / リン酸脱リン酸化 |
研究概要 |
本共同研究は、これまで魚類を主な実験材料として研究を進めてきた日本側研究代表者である長濱嘉孝と、両生類(アフリカツメガエル)について研究してきたアメリカ側研究者であるJames L.Mallerが中心となり、双方の研究グループが協力して脊椎動物における卵成熟誘起の制御機構に関する基本的原理を確立することを明らかにする目的で計画された。本研究では、日本側から4名、米国側から4名の研究者がそれぞれの研究室を訪問しあい、共同実験、情報交換、実験プログラムの交換、セミナー等を通して極めて活発に共同研究を展開し、多大な成果を挙げることができたが、下記にその概要を示す。 1.卵成熟のホルモン制御機構:魚類、両生類ともに卵成熟は脳下垂体から分泌される生殖腺刺激ホルモンによって誘起される。本研究では、この生殖腺刺激ホルモンの作用は、双方の種で卵に直接的ではなく、それを取り囲む体細胞性の濾胞細胞におけるプロゲステロン系のステロイドホルモンである卵成熟誘起ホルモン(魚類では17α,20β-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オン、17α,20β-DP:両生類ではプロゲステロン)の生成を介していることが確認された。さらに、卵成熟誘起ホルモンの作用機構についても魚類(ニジマス、ヒラメ)及び両生類卵を用いて双方が協力しあい検討した。その結果、17α,20β-DP、プロゲステロンともに通常のステロイドホルモンとは著しく異なり、卵細胞膜に存在する膜受容体に結合することにより作用発現することが確認された。ヒラメではこの膜受容体が卵成熟直前に生殖腺刺激ホルモンの働きで卵細胞内で生成され、卵細胞膜に移行することがはじめて明らかになった。また、両生類でも同様なことが示された。一方、受容体の化学的実体については未だ明らかでない。米国側では、すでに構造が解明されているプロゲステロン核受容体の抗体を用いて膜受容体の同定を試みたが不成功に終わった。日本側では17α,20β-DPの膜受容体を可溶化することに成功し、現在その精製を行っている。また、17α,20β-DP膜受容体に連結する情報伝達系として抑制性のG蛋白質が重要であることを発見し、現在このG蛋白質の実体を解明することと、さらにこの事実を利用して17α,20β-DP受容体のcDNAクローニングを開始した。このように卵成熟誘起のホルモン制御機構は、魚類と両生類で極めて類似していることが確認されたが、今後緊急に解決されなければならない重要課題はステロイドホルモンの新しい膜受容体の化学的実体の解明であり、この点についても今後も双方が協力しあい研究を進めていく点で一致している。 2.卵成熟促進因子(MPF):本共同研究の開始直前に魚類(キンギョ、コイ)、両生類でもMPFの化学的実体がcdc2キナーゼとサイクリンBの複合体であることが明らかにされていたので、本研究では卵成熟誘起ホルモンによるMPFの活性化機構の解析を重点的に行った結果、双方の種で明確な違いがあることが明らかになった。魚類では17α,20β-DPを処理する前の未成熟卵では35kDaのcdc2キナーゼはすでに存在するが、サイクリンBに関してはmRNAはすでに充分量認められるが、蛋白質としては検出されない。17α,20β-DPを処理するとサイクリンB mRNAからの翻訳が促進されサイクリンBが合成される。合成されたサイクリンBは直ちにすでに存在する35kDa cdc2キナーゼと複合体を形成する。次に、この複合体のcdc2キナーゼがすでに卵内にあるスレオニンキナーゼ(p40MO15)によってリン酸化され、161番目のスレオニンがリン酸化されcdc2キナーゼは34KDaとなり、キナーゼ活性が出現す。さらに、この活性化されたキナーゼによりサイクリンBのセリンがリン酸化され活性型MPFとなる。このように魚類卵では161番目スレオニンのリン酸化がMPFの活性化にとって重要であることが明らかになった。一方、両生類では未成熟卵でもcdc2キナーゼとサイクリンBはいずれもすでに存在し、それらはすでに複合体を形成しており、161番目のスレオニンもリン酸化されている。両生類卵では、プロゲステロン処理により14番目のスレオニンと15番目のタイロシンが脱リン酸化されることがMPFの活性化に必要であることが明らかにされた。魚類ではすでに未成熟卵でも14番目のスレオニンと15番目のタイロシンは脱リン酸化されている。このように魚類と両生類とではMPFの構成成分は同じであるが、卵成熟誘起ホルモンによるMPF活性の機構は著しく異なっていることが判明した。
|