研究課題/領域番号 |
04044178
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 岡崎国立共同研究機構 |
研究代表者 |
桑原 厚和 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (60142890)
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研究分担者 |
TAXI Jacques Department De Cytologie Institute Des Ne, 名誉教授
ANGLADE Phil Department De Cytologie Institute Des Ne, 研究員
鈴木 裕一 静岡県立大学, 食品科学部, 助教授 (50091707)
J Taxi Institute de Neurosciences, Univ. P. &M. CUR, Emeritus P
PHILLPE Angl Institute de Neurosciences, Univ. P. &M. CUR, Contractur
長島 雲平 御茶ノ水女子大学, 理学部, 助教授 (90164417)
小林 繁 名古屋大学, 医学部, 教授 (00018342)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
11,600千円 (直接経費: 11,600千円)
1993年度: 5,800千円 (直接経費: 5,800千円)
1992年度: 5,800千円 (直接経費: 5,800千円)
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キーワード | 腸管神経叢 / イオン輸送 / 神経ペプチド / クロライド分泌 / 大腸 / 消化管 / 受容体 / モルモット / 粘膜上皮 / 壁内神経 |
研究概要 |
生体内での水及び電解質の恒常性維持は、生命維持に必要不可欠な機構である。最近、生体における水及び電解質の恒常性維持に、消化管が重要な役割を果たしていることが、明らかにされつつある。これらの制御機構は基本的には、消化管に存在する神経系により制御されている。消化管は、脳や他の実質臓器と異なり、水及び電解質を分泌あるいは吸収する上皮細胞、それを制御している壁内神経系などが消化管それ自体に存在し複雑な系を構成している。従って、消化管での水及び電解質の制御機構を解明するためには、実際に水及び電解質を分泌する上皮細胞での細胞内情報伝達系の解析から上皮細胞を支配している神経系の制御機構をも含め、消化管全体を一つのシステムとしてとらえる巨視的な、研究思考が必要となる。 本研究は、上述の観点から、神経解剖学、神経生理学、分子生理学など、各分野の専門家を集めて総合的に消化管での水及び電解質の神経性制御機構を解明することを意図して企画した。 平成4年-5年度における国際学術共同研究により、現在までのところ、フランス側、及び日本側の共同研究者らにより、電子顕微鏡レベルでの水及び電解質の制御機構に関与する神経伝達物質の同定がほぼ完了しつつある。すなわち、消化管での電解質あるいは水の輸送調節に重要な意味を持つ、神経伝達物質であるアセチルコリンと神経ペプチドであるVIP(血管作動性ペプチド)、あるいはSubstance Pが1個の神経細胞中に共存することを、パリ第6大学のDrs.S.TsujiおよびP.Angladeとの共同研究により電子顕微鏡レベルで明らかにしたことは特筆すべき点である。また、代表者は1993年ドイツ連邦共和国ニーダーザクセン州立ペプチド研究所からの招請により、本研究の分子レベルでの制御機構を解析するため渡独し、細胞内情報伝達系に極めて重要な役割を演じている細胞内カルシウム濃度の測定を行なった。すなわち、細胞内情報伝達物質であるカルシュウムのsubstance Pによる上昇には少なくとも2種類以上の機構が関与していることをDr.G.Rechkemmerとの共同研究で明らかにした。さらに、実際に同定された化学伝達物質により、どのように消化管での水及び電解質の輸送が制御制御されているかを検討し、2種類以上の化学伝達物質が同時に、あるいはある一定の時間差をもって効果器細胞に作用することに
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より、効果器細胞の効果が著明に増強されることを見いだした。これら共同研究成果の重要性は、1930年代に、1個の神経細胞は1種類の化学伝達物質しか含まないという説で、ノ-ベル賞を受賞したDr.Daleの考え方を覆す生理学的データを提供した点にある。また、共同研究の成果の一部は、フランス及び中華人民共和国で開催された国際会議に代表者が招待され、発表した。その過程で、我々の研究成果がドイツ及びフランスの国立衛生研究所の研究者らの目に留まり、共同研究の申込があった。 さらに、本研究遂行中に上述のVIPと極めて類似している神経ペプチドが視床下部より発見され、pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide(PACAP)と命名された。PACAPは遺伝子構造解析の結果から38個のアミノ酸より成り、VIPと極めて高い類似性を有することが報告されたため、PACAPの消化管粘膜イオン輸送調節機構のおける役割を検討した。その結果、PACAPは漿膜側への適用により、VIPと同様に、容量一依存性に漿膜側から粘膜側への電流量を増大させ、これが、クロライド・イオンの分泌によるものであることを明らかにした。PACAPによるクロライド・イオンの分泌は、神経遮断薬であるテトロドトキシンの前処置により完全に消失した。これらの結果は、PACAPによるクロライド・イオンの分泌がすべて壁内神経系を介して制御していることを示唆しており、VIPによる分泌反応の制御機構とは異なることを示した点は重要である。また、PACAPによるクロライド・イオンの分泌機構にコリン一作動性神経系および非一コリン作動性神経系の両者が関与していることも明らかにした。さらに、VIP受容体とPACAP受容体の相同性に関する研究により、VIP受容体およびPACAP受容体は、一部その認識機構を共有するが、一方で、それぞれが独自の受容認識機構を有することを明らかにした。両者の受容体のクローニングは、現在フランスとの共同研究で進行中である。 なお本国際学術共同研究の成果を、総合的に討論するため、1994年3月7日と8日の両日岡崎国立生理学研究所において、内外の専門家を招聘し、国際研究集会“International Workshop on Recent Advasnces in Gastrointestinal Physiology"を開催した(添付資料参照)。 隠す
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