研究課題/領域番号 |
04044183
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 国立環境研究所 |
研究代表者 |
国本 学 国立環境研究所, 環境健康部, 主任研究員 (20142101)
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研究分担者 |
梅田 真郷 東京大学, 薬学部, 助手 (10185069)
BENNETT Vann デューク大学, 医療センター・生化学部, 教授
VANN Bennett デューク大学医療センター, 生化学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
4,400千円 (直接経費: 4,400千円)
1993年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1992年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | 脳アンキリン / 分子多様性 / 神経突起形成 / 神経軸索局在 / 成長円錐 / 神経毒 / 脳発生 / 培養神経細胞 / 神経軸索 / 神経突起伸展 |
研究概要 |
細胞膜裏打ち構造を構築する蛋白質の一種であるアンキリンは、脳を始め多くの組織、細胞に存在し、特に脳神経系では複数の分子種の存在、膜内在性蛋白質であるNa,K-ATPase、電位差依存性Naチャンネル、神経細胞接着分子等との相互作用が明らかにされ、その重要性が認識されつつある。これまでにヒト脳cDNAライブラリーからのクローニングを行い、赤血球アンキリンとは別の遺伝子によってコードされ、alternative splicingによって生じる少なくとも2種の脳特異的アンキリン(440kDa及び220kDa)が存在することを明らかにしてきた。本研究では、脳神経系におけるアンキリンの分子多様性の解析と、その存在様式、発現制御機構、生理的意義の解析を行うことによって、脳神経系の分子レベルでの理解を深め、脳神経系機能障害へのアンキリンの関与の可能性を明らかにすることを目的として、以下の検討を行った。 1.成体型である220kDa脳アンキリンに特異的な抗体の作成 220kDa脳アンキリンは分子全体が440kDa脳アンキリンの一部となっているため、通常の方法ではその特異抗体作成は不可能と判断し、splice pointに相当するオリゴペプチドを設計、合成し、それに対するポリクローナル抗体の調製を試みた。その結果、440kDa脳アンキリンとは交叉しない220kDa脳アンキリン特異抗体が得られた。更に、このオリゴペプチドを抗原として、モノクローナル抗体の作成を試みたが、現在まで220kDa脳アンキリンのみを特異的に認識するものは得られていない。 2.脳アンキリンの脳神経系における細胞特異性及び細胞内局在性の解析 各分子種に特異的な抗体を用いた検討により、胎児新生児型である440kDa脳アンキリンは、脳特異的であり、しかも神経細胞特異的であるのにたいし、220kDa脳アンキリンはグリア細胞でも発現されていることが明らかになった。更に、ラット小脳初代培養系、ヒト神経芽細胞腫NB-1を用いた分析から、440kDa脳アンキリンは神経突起伸展誘導に伴ってその発現(蛋白質、mRNAレベルで)が誘導され、神経突起伸展開始直後には成長円錐様構造体に局在し、神経繊維の成熟した後は、樹状突起、細胞体には殆ど存在せず、軸索に局在することが明らかになった。一方、220kDa脳アンキリンはNB-1細胞の神経突起伸展誘導でも発現は誘導されず、初代培養神経細胞においては、細胞体と樹状突起に局在した。すなわち、同じ遺伝子から生じる2種の脳アンキリンが、同じ神経細胞内において全く異なった局在を示し、440kDa脳アンキリンは軸索にsortingされることが明らかになり、この分子が有しているsortingに関与すると考えられる配列を始めとして、これら脳アンキリンが神経細胞の分化過程解析の有用なプローブとなりうることが示された。 3.神経毒の暴露による神経細胞中の脳アンキリンの発現及び局在の変化の解析 神経毒であるメチル水銀を致死濃度以下で暴露すると、NB-1細胞では神経突起の退縮が引き起こされ、これに伴い440kDa脳アンキリンの発現が低下すること、小脳初代培養系では軸索に存在する440kDa脳アンキリンが消失することが明らかになった。この時、220kDa脳アンキリンの発現は殆ど影響を受けず、メチル水銀の作用は極めて特異性の高いものであったが、これらの変化がメチル水銀の440kDa脳アンキリン発現に対する直接作用によるのか、メチル水銀による神経突起退縮作用の二次的な結果であるのかは不明である。 4.神経系細胞における440kDa脳アンキリン発現の特異的な抑制の試み 440kDa脳アンキリンの発現が神経軸索の伸展、維持に必須であるか否かを明らかにするため、NB-1細胞を対象として、特異抗体のマイクロインジェクション、アンチセンスオリゴDNA処理、アンチセンスRNAを生成する発現ベクターのトランスフェクションによる特異的な発現抑制を試みたが、まだ達成されていない。更に、ジーンターゲッティングにより脳アンキリン遺伝子をノックアウトしたマウスの作成も開始した。
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