研究分担者 |
YOON Shin Le 国立ソウル大学, 医学部生体医工学研究所, 特別研究員
CHEOL Sang K 国立ソウル大学, 医学部生体医工学研究所, 講師
HAN Ik Jo 国立ソウル大学, 医学部臨床病理学, 教授
KYUNG Phil S 国立ソウル大学, 医学部胸部外科, 教授
IN Seon Shin 国立ソウル大学, 医学部生体医工学研究所, 特別研究員
SEON Yang Pa 国立ソウル大学, 医学部内科医学, 准教授
BYOUNGーGOO M 国立ソウル大学, 医学部生体工学研究所, 教授
妙中 義之 国立循環器病センター研究所, 人工臓器部, 室長 (00142183)
井街 宏 東京大学医学部, 医用電子研究施設, 助教授 (10010076)
松田 武久 国立循環器病センター研究所, 生体工学部, 部長 (60142189)
加藤 久雄 国立循環器病センター研究所, 病因部, 部長 (80029959)
|
研究概要 |
本研究では,アジアでただ2ヵ国人工心臓の研究を行なっている日本と韓国が,体内完全埋め込み型人工心臓を開発するために,共同で血液適合性を含む生体適合性を主体とした利用技術と,システム周辺要素の基礎技術の確立を行なう。開発目標とするシステムは,電気エネルギーのみを健常な皮膚を介して体外から体内に伝送する以外は,システム全体を体内に植え込む人工心臓システムである。研究を推進するために日韓ワークショップを開催し,双方の技術的課題を挙げ,討論を行なった。以下に,各課題別に検討の成果を述べる。今回は我が国での開催であったため,研究分担者以外の日本の人工心臓研究者の参加も得て,充実した討論が行なわれた。 1.各種の人工心臓の構成要素について基礎的研究の開発 両国では,諸種の駆動方法による人工心臓の開発が行なわれている。国立循環器病センターでは,エレクトロハイドローリック式の埋め込み型人工心臓を駆動すめためのアクチュエータとして摩擦ポンプを用いてきたが,今年度は,その性能をさらに向上させるべく改良を試みた。流路の設計やモータの性能の向上によって,約6.5L/minの心拍出量を得ることができるようになった。北海道東海大学の電気機械駆動式の補助人工心臓システムは,ブラシレスDCモータの回転運動をボールネジの機構で往復運動に変換しプッシャープレート型のポンプを押す方式で駆動される。4.5L/minの拍出量を出すことができ,invitro試験で最長40日余りの連続運転を達成している。国立ソウル大学のシステムは可動式のアクチュエータで駆動される全人工心臓で,ローラ型のアクチュエータ自身の振り子運動で左右の血液サックが交互に圧平されて血液を拍出する。本年度は,現在のシステムの性能を評価するとともに,次のモデルの開発が開始された。これらのアクチュエータを駆動するための電気エネルギーを健常な皮膚を介して伝送する経皮エネルギー伝送システムの開発も,東京理科大学と国立循環器病センターの共同研究として行なわれた。20ワットの電力を伝送した場合,DCtoDCで84%の伝送効率を得ることができた。血液ポンプの構成部品である人工弁や,ポンプそのものの形状の改良も研究された。人工弁については高分子林料で製作された二尖弁やJellyfish弁の開発や評価に関する研究が行なわれた。ポンプの形状については,定常流ポンプ内の流れの可視化によるインペラ形状の評価や,流れの可視化に基づいた人工心臓用血液サックのデザインの検討が行なわれた。 2.人工臓器の血液適合性の基礎的研究と血液ポンプへの応用 血液ポンプの抗血栓性を向上させるためにいくつかの試みがなされた。我が国での研究には,東洋紡績総合研究所で行なわれたセグメント化ポリウレタンを中心とする抗血栓性材料の開発に関する研究,国立循環器病センターで研究されているハイブリッド組織の生体工学面からの研究,などがある。韓国では国立ソウル大学で,ポリウレタン膜上の細胞外基質への内皮細胞の播種,全人工心臓と左心補助人工心臓の血液接触表面への蛋白質の吸着,lumbrokinaseの血液凝固系に関する基礎的研究として,リポ蛋白と内皮細胞に関連する血液凝固阻害因子についての分子生物学的研究も行なわれた。 3,動物実験などによる評価と,それに基づいた改良 埋め込み型システムを目指して開発されたてきているデバイスを動物実験などで評価する試みもなされた。我が国では,国立循環器病センターで,エレクトロハイドローリック式全人工心臓の急性動物実験による評価と長期使用のための遠心ポンプの慢性動物実験による評価が行なわれた。前者は,体重50kg前後の成山羊の体内に収納できるいとう優れた解剖学的適合性や5L/min以上の心拍出量の維持など,満足すべき生体内性能を示した。また,後者では,成山羊で経口の抗血小板剤の使用により30日間以上の連続運転が可能で,溶血の低減と共に抗血栓性の向上も実現された。韓国では,国立ソウル大学で,可動式アクチュエータ式全人工心臓を動物実験で評価し,130kgの子牛に植え込んで約10時間の循環維持が行なわれた。同施設では,術後管理の改良に利用するために,全人工心臓植え込み後の術後管理のコンピュータシミュレーションも研究された。
|