研究概要 |
日本及びドイツは第二次世界大戦後,荒廃から立ち上がり,異なる道を辿りながら繁栄の頂点に立ち,世界に強い影響を及ぼすに至った。今後ドイツ及び日本がどうなって行くかは,アジア諸国,ECに大きな影響を与えることはもとより,世界の行く方を左右する大きな要因となることは間違いない。 今日到り得た繁栄は同じようなものであっても,ここに到る過程には,同じ所と異なったところがある。これが今後の両国の発展の様相を方向付けることになる。この発展の動因は,両国の人々の考え方,社会意識に基づくところが極めて大きいものと考えられる。 特にドイツにおいては,旧東ドイツの合併問題の影響を見極めておくことも不可欠のことであり,最近の東ヨーロッパの状況とも無縁ではない。 これらのことを研究する方法は様々あるが,思弁的方法によるものは,ややもすると思いつき,思い込みが先行し,成果の科学的積み上げは困難である。我々の立場はこれと異なり,計量的方法によるのがその特色である。 日独共同研究により,国民性・社会意識の変遷を実証的に捉え,さらに,これが過去の発展とどう係わってきたかを明らかにする。こうして国民性・社会意識の変化を踏まえ,今後の日本(人)・ドイツ(人)の行方の同異のすがたを科学的方法によって探ることが本研究の目的である。 即ち, (1)両国民の態度,意識構造,物の考え方,生活様式等の社会的,文化的側面についてその同異のあり方を比較・検討する。これらの側面は両国の社会において今後一層重要度を増すとみられる。 (2)(1)で比較・検討された側面のうち,たとえば社会構造,社会的変化,経済的安定度あるいは労働意欲,消費行動,政治的態度等について,相互関連の強い要因を探索する。 (3)これらにより本研究の主目的である将来の方向を予測する手がかりが得られる。 この共同研究では基礎資料として,日本側は主に統計数理研究所の国民性調査委員会が実施してきた「日本人の国民性」に関する継続調査(1953年から5年毎,これまで8回の全国調査を実施)および「意識の国際比較方法論の研究」で実施した日米,英仏および西独の5カ国比較調査等を利用し,ドイツ側は ZA(Zentralarchiv furempirische Sozialforschung der Universitat zu Koln)およびZUMA(Zentrumfur Umfragen,Methoden und Analysen e.V.,Mannheim)が1980年以来隔年実施している一般社会調査ALLBUS (Allgemeine Bevolkerungsumfrage der Sozial-wissenschaften)および1986年より実施の ISSP (International Social Science Programme)国際比較調査等を利用して社会変化と社会意識の変化の関連研究を政治,経済を含む人文社会の各分野にわたって理論的,実証的に進めることにした。1991年5月の日独科学セミナー「計量的社会科学研究」(E.Scheuch他(ドイツ側),林,三隅,佐々木,吉野,鈴木他(日本側))で社会変化と意識変化の関連の問題は種々取り上げられたが,セミナー形式では限界がある。両国研究者がまず基礎資料をもとに問題意識を明確にしデータ分析,討論をしながら検討を進めることにした。 年度別計画は次の通り 平成4年度は幅広く問題を取り上げ基礎資料の再検討を行なった,これらは, ◎問題意識の明確化 ◎研究内容の決定 ◎実証的研究実施のあり方の討論,決定および共同調査項目決定を含むものであり,日本側より1993年3月 別紙のように研究者8名が訪独し,調査打ち合せを行なった。 平成5年度は ◎日独それぞれでデータ収集 日本側--日本国内で全国調査ドイツ側-旧東ドイツを含む全体で調査データ交換,データ分析の実施 ◎日本側より訪独(1993年10月)研究発表・討論・まとめ ◎成果の刊行準備(成果の刊行は次年度以降別途考える)の予定である。
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