研究分担者 |
SCHMITZ Fran オクラホマ大学, 化学教室, 教授
JACKSON Kenn オクラホマ大学, 医学部, 助教授
MATSUMOTO Hi オクラホマ大学, 医学部, 準教授
平野 誉 電気通信大学, 電気通信学部, 助手 (20238380)
JACKSON Kenneth w. University of Oklahoma, Health Science Center
KENNETH W JA オクラホマ大学, 医学部, 研究助教授
松本 博行 オクラホマ大学, 医学部, 準教授
大橋 守 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (70015535)
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研究概要 |
本研究は電気通信大学電気通信学部分子工学講座大橋研究室とオクラホマ大学医学部生化学教室松本研究室及び化学教室Schmitz研究室の共同研究として生物における情報伝達物質の制御機構や分子認識を質量分析学的手法に基づいて分子過程として理解し,確立する事を目的とした.具体的テーマとしては(1)視覚における増幅制御及び伝達制御を行なっているアレスチン関連化合物であるフォレスチン,クラゲの発光蛋白質エクオリン,海産性天然環状生理活性ペプチド等につき高速原子衝撃イオン化法(FAB),エレクトロスプレーイオン化法(ESI),マトリクスレーザーイオン化法(MALDI),及び衝突活性化(CID)-タンデムマススペクトロメトリー (MS/MS)の技術を適用して,その一次構造,S-S結合位置,翻訳後修飾,りん酸化をうける位置等を決定する方法論を協同で開発することとした.フォスレスチン関連オリゴペプチドの調製と合成,翻訳後修飾蛋白質の調製,天然生理活性ペプチドの抽出は主としてオクラホマ大学で担当し,各種質量分析を用いたLadder方式による一次構造の検討は電通大で行った.研究実績の概要を以下にまとめる. 1.研究者の交流:1992年9月オクラホマ大学Matsumotoが電通大を訪問し講演をおこなう.同年10月電通大辻本オクラホマ大訪問,1993年1月〜5月まで大橋研大学院学生畔上亮,オクラホマ大Schmitz研究室へ留学,同年8月Matsumoto電通大来学,同年9月大橋研大学院生絹見朋也Matsumoto研究室へ留学,同年11月電通大 大橋守,平野誉Matsumoto研,Schmitz研訪問しセミナーを行う.1994年3月Jackson電通大訪問しセミナー同年6月Schmitz電通大訪問し,同年7月Matsumoto電通大訪問,同年8月平野,丹羽オクラホマ大学訪問,同年11月留学中の絹見朋也一時帰国しセミナー等活発な人事交流と研究上の討論を行なった.この間平成4年度研究代表者であった辻本和雄が北陸先端科学技術大学院大学へ出向したことにより,研究代表者を大橋守に交代,平成6年度には研究協力者に電通大丹羽治樹を加える等組織上の変更を行った. 2.研究成果:本計画を通じてオクラホマ大学松本研究室の主たる研究成果はホスレシチンのin vivoでのりん酸化部位をきめたこと(1994,Neuron).本研究には電通大からの留学生絹見朋也が直接関与した.又前研究代表者辻本和雄が直接関与した協同研究の成果として,カエル視細胞カン体外節のcGMPホスホジェステラーゼの燐酸化サイトの決定があげられる(1994,J.Biol.Chem.).これらの研究では両研究室の協同研究が極めてうまく行なわれた例である.現在両研究室で精力的に研究が行なわれているのは,質量分析法を用いたペプチドの微量シークエンス法の開発,改良である.1993年Science誌上に発表された新しいラダー法を用いて一挙にシークエンスを決めるもので,従来の自動シークエンス法では解析困難であった翻訳後修飾された位置と方式を一義的に決め得ることが期待される.既に我々もペプチド残基15程度のラダー解析には成功しており,又FAB法を用いてもラダー解析を行い得る改良法も確立する事が出来た.フォスレスチンについての協同研究の結果は1995年5月アメリカ質量分析学会での発表の予定である.電通大における研究成果にはレチナ-ル類似体を用いてレチノクロム光異性化のコンフォーメーション解析を行った(Photochem.Photobiol.,1993),アポエクオリンのs-s結合を質量スペクトルに基づき決定した(FEBS Lett.,1993),セレンテレートルシフェリンの化学発光過程解明に質量分析の手法を導入した(Tetrahedron 1993),フォトアフィニティラベル用光感作セレンテラジンの合成に成功した(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1994)ことなどがあげられる.フォトアフィニティラベル法はエクオリンの活性部位決定にとって,フォスレスチンの翻訳後修飾と同様に新しい質量分析法によるラダーシークエンスによってラベル位置が決定できると予想され,成功すればその波及効果は極めて大きいものと期待される.
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