研究課題/領域番号 |
04045029
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 大学協力 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉浦 昌弘 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 教授 (80027044)
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研究分担者 |
王 喜萍 復旦大学, 生命科学院, 講師
孫 崇栄 復旦大学, 生命科学院, 教授
續 伯彦 愛知学院大学, 教養部, 教授
若杉 達也 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 助手 (10212317)
杉田 護 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 助教授 (70154474)
SUN Chong-rong School of Life Sciences, Fudan University
WANG Xi-ping School of Life Sciences, Fudan University
忻 か 復旦大学, 生命科学院生物学部, 講師
平井 篤志 東京大学, 農学部, 教授 (60023470)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
1993年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1992年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
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キーワード | イネ / DNA / ミトコンドリア / 葉緑体 / 塩基配列 / cDNA / オルガネラゲノム / ミトコンドリアゲノム / 葉緑体ゲノム / RNA結合タンパク質 |
研究概要 |
植物のオルガネラ機能の発現には、オルガネラゲノムと核ゲノムが協調的に働いている。この協調的発現機構の解明をめざして以下の共同研究を行なった。 1.野生イネについては十分な量の種子が得られないので、ミトコンドリアの単離が困難であることから、全植物体より全DNAを調製した。これを用いて、栽培イネ(日本型)のミトコンドリアDNAクローンをプローブとしてサザン法で分子構成の分析に努めたが、ノイズが多くて確定的な結果が得られなかった。 2.栽培イネ(日本型)のミトコンドリアと葉緑体DNAの相同配列を、ミトコンドリアDNAの一部の塩基配列を決定することにより、いくつか明らかにした。一方、イネミトコンドリアゲノム(マスターサークル、492kp)の約6%に当たる29,588bpの配列を決定して、コンピューター解析を行なった。この領域に、完全な遺伝子として、開始メチオニンtRNA遺伝子(73bp)、リボソームタンパク質S12(125コドン)とL16(185コドン)遺伝子、及びNADH脱水素酵素サブユニット3遺伝子(223コドン)を見出した。また、リボソームタンパク質S2とATPアーゼのαサブユニット遺伝子の一部と相同なキメラ遺伝子配列と、リボソームタンパク質S3遺伝子とNADH脱水素酵素サブユニット4遺伝子の一部が存在していた。これらはいずれも相同性は高くないので、葉緑体ゲノムの一部がミトコンドリアゲノムに転移したとは考えにくい。このゲノム領域は完全な遺伝子と遺伝子間の長いスペーサーで、ここには19のオープンリーディングフレーム(70コドン以上)といくつかのミトコンドリア遺伝子の断片が13箇所見出されたので、植物ミトコンドリアゲノムの進化過程が極めて特異的であると考えられる。また、NADH脱水素酵素サブユニット4遺伝子は3個のイントロンを含むが、第1イントロンの配列をコムギの対応するイントロンと比較すると228bpが中央部に挿入されている。この挿入配列の両端にはGGTAGGGTの並列配列が存在するのでこれを介してコムギでは欠失したと考えられる。 3.葉緑体と核のゲノム間の協調的発現に関与する可能性のあるRNA結合タンパク質とcDNAがタバコで得られたので、これをプローブとして、イネでも探索することとした。イネは中国で一般的な栽培種(インド型)を用いることとし、芽生えによりリポリ(A)RNAを抽出してcDNAライブラリーを作製した。並行して同じ芽生より全DNAを抽出し、ゲノミックDNAライブラリーも作製した。引続き中国側では栽培イネのミトコンドリアDNAの構造解析とイネのRNA結合タンパク質cDNAの単離とゲノムDNAの解析を行なう予定である。 4.最近、葉緑体遺伝子の転写産物にRNAエディティングが起ることがトウモロコシやタバコで明らかにされた。イネに於いてもこの過程が存在するかどうかを、まず可能なRNAエディティング部位を探し出すコンピュータープログラムを作製し、いくつかの部位を予想できた。これは将来実験的にRNAエディティングの存在を確認するのに有用である。この研究は日本側で引続き行なうこととしている。 5.オルガネラゲノム発現に関与する核ゲノム因子の探索をイネでも開始したが、イネ葉より葉緑体を多量に調製するのは困難であったので、実験の容易なタバコに切り換えて、新しい葉緑体RNA結合タンパク質の単離を進めた。10種ほどの新しい可能性のあるタンパク質を単離し、それぞれのN-末端分析を行った。そのうちの3種のものはカルピンサイクル系の酵素であることが示され、それらが代謝酵素及び発現因子の2種の役目を持つことが示唆された。この研究は引続き日本側で行い、タバコのcDNAが得られれば、中国に於いてイネの相同遺伝子を単離・解析する予定である。
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