研究課題/領域番号 |
04045047
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 大学協力 |
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
吉川 たかし (吉川 尭) 北里大学, 獣医畜産学部, 教授 (80050467)
吉川 堯 (1994) 北里大学, 獣医畜産学部, 教授
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研究分担者 |
韋 旭斌 長春農牧大学, 助教授
王 水琴 長春農牧大学, 教授
李 養賢 長春農牧大学, 教授
小山田 敏文 北里大学, 獣医畜産学部, 講師 (20160947)
小笠原 俊実 北里大学, 獣医畜産学部, 講師 (90050674)
吉川 博康 北里大学, 獣医畜産学部, 助教授 (70101516)
WANG Shuiqin Changchun University, China
李 毓義 長春農牧大学, 獣医学部, 教授
劉 宝岩 長春農牧大学, 獣医学部, 教授
小山 弘之 北里大学, 獣医畜産学部, 教授 (00072372)
椿 志郎 北里大学, 獣医畜産学部, 教授 (70050507)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
5,300千円 (直接経費: 5,300千円)
1994年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1993年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1992年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 地方病性運動失調症 / 銅欠乏 / 血清酵素 / 病理学 / 鹿 / 中国 / 脱髄 / 弾性線維 / ミトコンドリア / ペルオキシゾーム / 運動性失調症 / 脊髄白質変性 / 免疫異常 |
研究概要 |
前年度および前々年度における成績から、中国で集中発生した運動失調症は、明らかに銅代謝障害によることが強く示唆された。従って、本年度は銅がもたらす生体内の病態を実験を加えて病理学的に検討した。得られた成績は次の通りである。 1.シカの地方病性運動失調症における肝臓の病理形態学的検討:生体の銅代謝に重要な役割を果たしている肝臓について検討を加えた。(1)組織学的には、共通的に肝細胞は混濁腫脹に陥り、多数の微細空胞を形成していた。(2)P-dimethylamino-benzylidene-rhodamine銅染色を用いた組織化学検査的では、発症例は健康例に比較して銅果粒の著しい減少を示していた。(3)電子顕微鏡観察で、肝細胞は明調・暗調の両細胞が識別された。明調細胞は、細胞質内ミトコンドリアが著しく膨化・変形し、クリスタ構造は規則性を失い、さらに融解して不明瞭となっていた。また同時に、限界膜に包まれ時折フィラメンタスな構造を容れた中電子密度のペルオキシゾームの増数を伴っていた。これら構造に加え細胞質内には様々な不整形高電子密度果粒が観察された。またリボゾームが減少し、タンパク合成能の低下が窺われた。暗調細胞の核あh変性に陥り、ミトコンドリアの融解によって細胞質内小器官は識別不能となっていた。すなわち、本症の肝臓病変は慢性に経過する消耗性ないし代謝機能低下として理解され、ミトコンドリアの変性およびペルオキシゾームの増数は、銅含有酵素チトクロームオキシダーゼ等の酵素系の障害が注視された。 2.シカ地方病性運動失調症における血管系病変の病理:銅代謝異常と血管障害が指摘されている。そこで本研究は全身の動脈系血管の病態について病理形態学的に検討を加えた。その結果、発症例共通的に脊髄クモ膜下腔脊髄動脈および辺縁枝動脈、大動脈弓、胸大動脈、腹大動脈、その他諸動脈の繊維化並びに弾性繊維の断裂・消失が観察された。これら変化は、タンニン酸染色を用いた電子顕微鏡観察においても明らかにされた。すなわち、無構造高電子密度の弾性繊維は、均質性を失い断片化ないし消失し、平滑筋細胞間は膠原繊維の増生によって拡張していた。かかる弾性繊維の特徴的変化は、本症が銅欠乏との因果関係を強く示唆し、エラスチンのペプチド間架僑の形成に関与する銅含有酵素lysyl oxidaseの活性低下が推考された。加えて、本症の特徴である脱髄の病理発生に対して、脊髄血管障害による循環障害(虚血)が重視された。 3.実験的銅欠乏ラットにおける肝臓の微細構造変化:シカ地方病性運動失調症は、病理学的ならびに臨床生化学的に銅代謝異常が強く考察されたので、ラットを用いて実験的銅欠乏を作出し、その病態を比較検討した。その結果発症鹿と本質的に類似の病理変化ならびに生化学的変化が認められた。 結論:中国で集中発生したシカの地方病性運動失調症は、原因学的には慢性且つ持続性の銅欠乏による。本症の病理学的特徴である脊髄における脱髄は動脈性血管障害、とくに脊髄動脈系血管壁の繊維化並びに弾性繊維の変性と密接な関係で生じるものと解される。 なお、最終年度にあたり、これら一連の研究成果は第118回日本獣医学会にて、中国の共同研究者を招き報告した。
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