研究概要 |
私共は,白血病前駆細胞(L-CFU)が熱に極めて弱いこと見出し,この生物学的特性をex vivo marrow purgingに応用できると考え,シミュレーション実験など基礎的検討の後,温熱(42℃)とインターフェロン処理による自家骨髄移植(ABMT)をALL再発例に実施(BMT,T:163,1991)し,その有効性と安全性を確認したので,昨年に引き続き,症例の集積と白血病再発例への適応拡大を試みた。また,自家BMTではGVL効果が期待できないことから,移植後サイクロスポリンを投与し,自己GVHDの誘導を試みた。 その後,温熱処理による自家BMTが3例追加され,いずれも移植後の血球の回復は速やかで,自己GVHDは3例中2例に誘導された。うち1例は長期生存中であるが,1例は経過中にサイトメガロウイルス肺炎を合併して死亡した。しかし,移植後の白血病再発は認めなかった。以上のごとく,温熱とタンターフェロン処理によるmarrow purgingと移植後の自己GVHD誘導は臨床的に意義あると考えられる。いかい,未だ症例が少なく,今後さらに症例の集積と経過観察が必要である。 一方,白血病再発例への適応拡大を目的に,白血病細胞株(HEL,HL60など)と正常ヒト骨髄細胞を1:20,1:10,3:10,5:10の比で混和し,温熱処理(42℃,0〜120分)で白血病細胞をどの程度除去できるか否かin vitroで検討した。その結果,30%程度白血病細胞が混入していても,正常CFU-GMに影響することなく,除去することが可能であった。温熱処理によるpurgingは操作が簡単で,極めて経済的であるが,白血病細胞の除去効果は,ml当り4-6logであった。 以上より,温熱処理によるpurgingは,正常造血幹細胞の抑制も軽度(3.3〜3.4log程度)であり,かつ変異原性や発癌性もなく安全性の高い方法と考えられる。
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