研究概要 |
cotがん遺伝子は、SHOK細胞系を用いて検出されたSer/Thr Kinase系のがん遺伝子であり、C末端則のtruncationにより活性化されている。cot proto-oncogeneは、細胞増殖シグナル伝達系に関連する分子であると予想されるが、その生理的役割はまだ明らかではない。 cot proto-oncogeneの遺伝子産物は、58kDおよび52kDの2つの分子である。これらは、29アミノ酸離れた2つの翻訳開始点から読み取られており、両者の生化学的特性は、自己リン酸化活性や半減期に関してわずかに異なっていた。また、cot cDNAを導入したSHOK細胞を同調培養すると、S期、G2/M期に自己リン酸化活性が高い傾向を示した。 マウスcot proto-oncogeneのクローニングし、その組織特異的発現について検討した。cot遺伝子の発現は全般に低いが、多くの臓器で発現が見られた。新生マウスでは、小腸および大腸、成熟マウスでは、甲状腺、胸腺、脾臓、肺での発現が比較的高い。第3、6、9、12週齢のマウスの骨髄、胸腺、脾臓におけるcot遺伝子発現をRNA-PCRを用いて比較すると骨髄では3及び6週齢、胸腺では6および9週齢に発現のピークが認められたが、脾臓における発現レベルは3-12週齢まで一定であった。 cotは、mos,raf,cdc2とは遺伝子構造が明らかに異なっており、相同性を示す類縁遺伝子の存在も確認されていない。また、cyclinなどの蛋白と複合体を形成する可能性も示されず、S期、G2/M期の自己リン酸化活性の変動の意義も不明である。cot遺伝子発現のレベルは一般に低く、どの細胞で特異的に発現しているかを判断することが難しい。現在のところ、従来の生化学的解析を続けるよりも、発生工学による解析を進める方がcotの生理活性を明らかにする上で有効ではないかと思われる。そこで、マウスのcot遺伝子変異体を作成してgene targetingやreplacementによるcotがん遺伝子の生理的機能の解析を予定している。
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