研究概要 |
HTLV-I感染者のうち,成人T細胞白血病(ATL),脊髄疾患(HAM/TSP),Sjogren症候群,関節炎,ぶどう膜炎等を持つ患者及び無症候者の末梢血リンパ球から,HTLV-I感染細胞を樹立しこれを用いてHTLV-I特異的キラーT細胞の誘導を試みた。HAM/TSP患者では,HTLV-I刺激に反応増殖してきた細胞は自己HTLV-I感染細胞に対して高いレベルの障害性を示した。この障害性は,抗CD8抗体とイムノマグネチックビーズで処理すると著しく低下した。このようなCD8陽性HTLV-I特異的キラーT細胞は,Sjogren症候群・関節炎・ぶどう膜炎の患者の一部からも誘導された。これらのキラーT細胞は,HTLV-I抗原のうちenv-gag-pX遺伝子産物のいずれとも反応したが,特にp40taxに対して高いキラー活性を示し,このことは誘導された全てのCD8陽性キラーT細胞に共通であった。エンベロープ抗原に対する反応は,p40taxの次に高い傾向があり,中にはp40taxとエンベロープの両方に対し同レベルの高いキラー活性を示すものがあった。一方,無症候者からHTLV-I特異的と考えられるCD4陽性キラーT細胞も誘導されたが,その認識抗原は同定できなかった。また,ATL患者と無症候者及びぶどう膜炎患者の一部からは,HTLV-特異的キラー活性をもつ細胞は誘導できなかった。 全体として,p40tax優位のキラーT細胞応答は炎症性疾患を有するHTLV-I感染者の多くに認められ,ATLを含むあるグループでは検出できない傾向が認められた。現在引き続き種々の症例について同様の検索を行なっている。このような疾患による細胞性免疫応答の違いを説明する他の要因として,HLAタイプあるいは抗原発現についても今後研究を進めたい。
|