研究概要 |
B型肝炎(HBV)ウイルスに対する受容体糖タンパク質を初めてヒト肝臓から分離精製することに成功した。先ず、標的細胞への結合および侵入に関与するHBV外皮タンパク質(HBs抗原)粒子を遺伝子工学的に調製し、これと結合するレセプターの超微量測定法を確立した。これは我々がすでにインフルエンザウイルス受容体の検索に開発した方法を応用したものである。その結果、ヒト肝のジョードサリチル酸ナトリウム(LIS)抽出液のシアロ糖タンパク質画分に強い結合活性を見いだした。種々のクロマトグラフィーにより微量成分の活性糖タンパク質をほぼ均一にまで精製することができた。本糖タンパク質はシアリダーゼまたは過ヨーソ酸処理することにより受容体としての活性を消失すること、タンパク分解酵素により徹底的に消化してオリゴ糖ペプチドとしても活性は保持されていることなどから、受容体活性はタンパク質部分でなくシアロ糖鎖に担われていることを見いだした。さらにヒト肝から受容体活性を持つシアロ糖ペプチドをほぼ純粋な形で分離することができた。グリコフォリンやフェツインなどにはHBVの結合活性が認められないことから、これらには無いユニークな糖鎖構造をしていることが示唆された。現在この糖鎖構造を解析中である。 また,C型肝炎の受容体に関しては、ウイルスエンヴェロープタンパク質をコードするE,NS1/E2領域をカバーするタンパク質のCHO細胞およびバキュロウイルス系での発現系を利用してヒト肝から検索を始めたところである。
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