研究概要 |
腫瘍細胞障害性を有するNK,LAK細胞の標的認識機構の多くは不明である。我々が発見したヒトレクチン様分子NKG2はNK,LAKレセプターの候補の一つである。本研究はNKG2ファミリーの遺伝子及びタンパク分子の構造、機能、またNKG2のリガンド分子の性状と発現細胞の同定を目的としている。 特異的プローブを用いたサザンブロットよりNKG2A/B及びDは各一つの遺伝子、Cは3つの関連遺伝子から成ることが判明した。mRNAの発現はCはNK,LAK細胞のみに限られているのに対してAとDはT細胞やB細胞の一部も陽性であり各サブタイプ遺伝子は異なった発現調節を受けていることが明らかとなった。ヒトNK細胞株を免疫して得たEC5抗体はNK細胞、LAK細胞、B細胞とFACS解析にて反応した。NK細胞株を用いた免疫沈降反応で40kd,24kdバンドが検出された。EC5添加によりLAK細胞障害活性の上昇が見られた。NKG2cDNAを各種細胞に導入しトランスフェクタントを作製したが、EC5によるFACS染色の結果は一貫しておらずNKG2分子の細胞表面発現は確認できていない。NKG2の細胞外領域と免疫グロブリン定常部を融合したキメラ分子(NKG2Rg)を作成し、これを用いてFACS解析を行ったところHL60,U937,P815が染色され、これらの細胞にNKG2のリガント分子が存在することが示唆された。一方NK,T,B細胞株等は陰性だった。NKG2分子は細胞外に糖鎖を認識、結合するレクチンドメインを持ち、糖鎖との結合性が考えられる。そこで各種糖鎖、糖脂質とNKG2Rgとの反応性をELISAで検討した所、スルファチドとの結合が観察され、スルファチドがNKG2リガンドの一つであることが示唆された。マウスNKG2cDNAクローンの分離を精力的に行ったが得られなかった。マウスでの発現量が著しく低いかヒトとの相同性が少ないことが原因と考えられる。今後さらにNKG2分子及びそのリガンドの構造機能解析を行っていきたい。
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