研究概要 |
本年度はIn vitroにおいて暴露する抗癌剤薬剤量と殺細胞能を定量的に判定でき、かつ臨床投薬時の薬剤量に近いカットオフ値でその抗癌剤の抗腫瘍効果を予測、判定可能な抗癌剤感受性試験の検討を行った。対象としてヒト悪性細胞株(PC-7,PC-9,PC-14,K562)を、薬剤はシスプラチン(CDDP)、カルボプラチン(CBDCA)、マイトマイシン(MMC)を用いて(1)HTCA(human tumor cell clonogenic assay)法、(2)従来からのMTT法、(3)3日間の追加培養を加えたMTT法、(4)7日間の追加培養のMTT法を比較検討した。抗癌剤薬剤量と殺細胞能を定量的に判定できるかのを検討では杉山らの手法を用いたが(Cancer Chemother.Pharmacol.,21,185,1988)、(1)(3)(4)法ではAUC依存性薬剤か時間依存性薬剤の鑑別は可能であったが、(2)法は不可能だった。CDDP,CBDCA,MMCがAUC依存薬であることを確認し、これらの薬剤で50%抑制に必要とされるAUC量(AUC50)を比較した結果、AUC50は4細胞株、3薬剤すべてについて(1)<(4)<(3)<(2)となった。(2)法のAUC50は少なくともヒト臨床投薬時のAUCの12.7倍以上であったが、(1)法では0.51〜1.04倍と臨床投薬時のAUC量に近似していた。(4)法では4倍以下であった。また、薬剤暴露、薬剤洗浄後の追加培養中の殺細胞能と増殖抑制能に薬剤間に差があり(CDDP≦CBDCA<MMC)、抗菌剤と同様に抗癌剤にもPAE(post antibiotic effect)様作用があることが判明した。追加培養の重要性が認識され、(3)(4)法が確立されたものと考えられる。 現在、臨床材料を対象とした抗癌剤感受性試験を展開中である。
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