研究概要 |
標識モノクローナル抗体を用いるポジトロン断層法(PET)による癌の診断に関する本課題の基本的戦略は,投与後早期に標識モノクローナル抗体(ターゲット組織への親和性を示す)と標識非抗体(ターゲット組織への親和性を示さない)とを経時的に使用し,PETによる両者の画像を再構成して抗体の特異的集積画像を抽出することにある。1.モデル化合物として肝細胞表面受容体に特異的に結合することが知られているNGAとHSAの ^<11>C標識蛋白質を用いた基礎的検討はアイデアの妥当性を示した。しかしこの ^<11>C標識は,特に肝臓において容易に分解されることが明らかになり,インビボでの安定性に問題があった。抗体のより安定な標識,特に ^<18>F標識法の検討が今後の課題である。2.2-[ ^<18>F]fluoro-L-tyrosine( ^<18>F-Tyr)と6-[ ^<18>F]fluoro-L-fucoseによる標識モノクローナル抗体のインビボ調製は収率を十分高めることができず,実用段階に至らなかった。3. ^<18>F-Tyrを用いるPETによる癌診断の可能性を検討した。 ^<18>F-Tyrは動物実験では癌組織に集積し,蛋白質画分に移行するが,シクロヘキシミドで蛋白質合成を阻害したときにも同様に集積することから, ^<18>F-Tyrは癌の蛋白質合成を評価するというよりは、むしろ細胞膜のアミノ酸輸送能を評価できるトレーサーであることが明らかになった。同様の結果は[methyl- ^<11>C]methionineについても明らかになったが,[1- ^<11>]leucineは蛋白質合成能とアミノ酸集積によい相関が認められた。
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