研究概要 |
1.実験結果:(1)断層至近距離において顕著な高周波震動が発生する時刻は断層の局所的破損過程が始まる時刻とほぼ一致する.(2)強震動継続時間はすべり継続時間に比べ非常に短く,局所的破損時間にほぼ比例する.(3)断層至近距離の強震動には,破損領域の存在によって生じるとされている震源のfmaxよりも高い周波数成分が含まれている.(4)局所的破損時間が長くなるほど、強震動に含まれている高周波成分が少なくなる.2.高周波強震動発生機構のモデル:以上の実験結果は,断層至近距離の高周波強震動は断層の局所的破損過程から生じていることを示唆している.脆性的な岩石の破損過程は,巨視的破壊先端域で微小なアスペリティが集中的に破壊され,破損領域内における微視的過程はかなり複雑なものと考えられる.断層の破損領域内に多数の円形クラックを置き、これが巨視的破壊フロントの伝播とともにランダムに破壊していくモデルをもちいて,断層至近距離における理論波形を計算したところ,上記の実験結果を満足させる結果を得ることができた.これは上の考え方を支持するものである.3.議論:前節で述べた研究成果のうち,強震動予測にとって特に重要なことは,高周波強震動の継続時間がすべりの継続時間に比べ十分短く,高周波のエネルギーが破壊開始直後に集中していることである.また,このことは,断層至近距離で高周波強震動の継続時間を測定することができれば,断層の破壊力学的パラメターを推定できることを示している.これを利用して地震断層の破壊力学的パラメターが求まれば断層破壊過程に対する理解が進み,物理的により正当な断層モデルを用いた強震動予測を可能にするものといえる.
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