研究概要 |
将来起こるであろう自然災害の危険度を正しく評価するためには,災害の規模と発生確率を知ることが必要である。このために歴史時代だけにとどまらずに12万年前までにさかのぼって,日本とその周辺で起こった爆発的噴火のカタログを完成させた。これは『火山灰アトラス』として東大出版会から1992年8月に出版した。また火山噴火史の事例研究として,東伊豆単成火山地域,那須火山を対象に調査してその成果を報告した。 前者の『火山灰アトラン』は1枚1枚のテフラ(火山灰)層のもつ鉱物組み合わせやそれらの屈折率などの属性を表に示した上で,その年代を決定し,分布範囲を示した。すなわち過去に起こった爆発的火山噴火の被害がおよんだ範囲が図によって示されており,個々の噴火事例の発生年代も決定されている。したがって特定規模の噴火災害が起こる時間確率を評価するための基礎資料が揃ったと言える。以上のように,爆発的噴火による災害については,規模と発生確率を明言して未来予測をする準備が整った。 事例研究である,東伊豆単成火山地域で新しく編まれた噴火史は,1989年に海中で噴火してその後もしばしば群発地震を起こしている同地域についての今後の噴火推移の見通しを与えている。もう一方である那須火山では最近の時代に甚大な被害をもたらした噴火が起こっており,同火山の噴火史に関する新しい知見は噴火災害に関する近未来予測を立案するときの重要な基礎資料となる。
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