研究分担者 |
杉山 武敏 京都大学, 医学部, 教授 (20030851)
西村 泰治 熊本大学, 大学院医学研究科, 教授 (10156119)
野村 大成 大阪大学, 医学部, 教授 (90089871)
島 昭絋 東京大学, 理学部, 教授 (60011590)
池永 満生 京都大学, 放射線生物研究センター, 教授 (70025378)
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研究概要 |
環境変異原の作用で形成される変異細胞の選択される仕組みやヒトでの突然変異の本態を追究し,環境要因と個体変異の相互関与と疾病の発生を明らかにしようとした。突然変異を定量化できる遺伝指標の確立にも努めた。1)低濃度変異原物質(NCS)を培養リンパ球に作用させて誘発される染色体異常を観察した。同一個体で300以上の中期細胞を検討し,25種の単純な欠失,55種の単純な均衡転座を有する中期細胞を観察した。そのうちの1個がt(11;14)(q13;q32)で,腫瘍に特異的な転座と切断点まで完全に一致した。環境要因の遺伝的影響の初期像に関する新たな知見を得た。2)色素性乾波症(XP)患者で,体細胞がDNA修復能を欠く細胞と高い修復活性のモザイクになっている稀な例を見出した。UV高感受性クローンでは,A群XP細胞と同様にintron3の3末端のGがCへと変化した塩基置換突然変異のホモ接合体であることを確かめた。3)50種の近交系マウスに微量の放射線(0.01-0.5Gy)やステロイドホルモンを作用させると作用量に比例して細胞間期死が増加した。特に胸腺における微量放射線誘発間期死は,明確なマウス系統差があり,C57BL/6J,AKR/J等は高感受性N4,A/J,PT等は中間型,C3H/HeJ,HT,DBA/2J等は抵抗型であった。4)分子レベルでの解析を導入し低応答者群では特定のHLA-DR-DQ対対立遺伝子が著明に増加しており,このHLA対立遺伝子に関してヘテロ接合体でも低応答性を示すことを明らかにした。さらに低応答者にのみHLA-DQ分子により提示された溶連菌M蛋白に由来する抗原ペプチドを認識するCD4^+T細胞が存在し,その存在下にCD8^+T細胞が増殖することを示した。5)γ線,核分裂中性子,ENUを作用原とし雄生殖細胞を急処理した場合の線量-効果関係を,累計585,900個の受精卵,遺伝子座数にして1,469,663個について調べた。この結果,生殖細胞に対する遺伝的影響に及ぼす細胞分化の役割は,作用原により著しく異なることが示された。
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