研究概要 |
1.広域越境大気汚染の国際的規制-極東地域の場合 この地域における越境大気汚染(特に酸性雨)問題の国際的解決のために,これまでの欧州や北米における事例の研究結果から,次のような段階的措置が勧告できる。(1)問題の共通認識のための科学者レベルの国際会議の開催,(2)UNEPやESCAPのような国際機関のよびかけによる,又はこの分野で先進国である日本のイニシャチブによる政府間レベルの国際会議の開催,(3)政治的合意が成立した段階での国際条約の交渉(内容的には,規制物質の特定,科学調査・モニクリング・情報交換のための国際協力,締約国会議の設立など),(4)締約国会議に対するナショナルレポートの提出と同会議による審査,(5)締約国会議による条約実施のための勧告やガイドラインの採択,(6)科学的知見が確立し政治的合意が成立した段階での締約国会議による議定書(例えば国際的モニタリング・ネットワークの確立,特定物質の削減値の設定など)の採択,(7)この地域の構成国の特徴から,科学的調査やモニタリングのための資金調達や汚染防止のための技術移転において,先進国日本は積極的貢献をすべき(それは日本に対してプラスのブーメラン効果をもたらす)。 2.地球温暖化防止のための国際法制度 1992年6月に調印された気候変動枠組み条約は全ての締約国に温室効果ガスの排出と吸収についての目録作成を義務付ける一方,先進国に対しては「差異のある責任」(温室効果ガスの1990年レベルへの回帰,途上国に対する「新規かつ追加的」資金の提供と技術移転を行う義務)を課した。資金については当面地球環境ファシリティ(GEF)を利用する。条約交渉では賦課金や排出権取引などの非法律的手法の導入を議論されたが結局採用されなかった。しかし温暖化問題はエネルギー消費に密接に関連するためこのような手法は今後導入される可能性を多く残している。
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