研究概要 |
本研究は都市化の進行する茨城県南地域を流れる小貝川を対象河川として人間活動に伴う流域の変容を把握し,治水・利水との調和をはかりながら河川環境を保全するための基礎的研究である。氾濫・蛇行してきた小貝川の河畔は開発が遅れ,河畔林など比較的自然が残されている。 研究は(1)天田・佐藤の治水面からみた河畔林の機能調査,(2)堀内・鷲谷の河畔林周辺の植生の多様性と絶滅危惧植物の保全に関する研究(3)長嶋・糸賀・の地理情報システムを用いた自然条件を考慮した土地利用秩序に関する研究にまとめられる。成果の概要は以下のとうりである。 (1)で河畔林の形成は洪水時の堆砂のプロセスと密接な関係がある。現河道は過去からの実証的結論であり,流路幅(それに規定される掃流力)と側岸の侵食抵抗力が平衡状態にあると考えられ,これを昭和44年から20年間の河川敷幅の変化を調査する事により確かめた。同じく河床変動の経年変化から河畔林が平水路固定機能をもつことが推測された。 また河畔林は水理学的には大きな粗度とみなすことができる。その抵抗特性について実験的検討を行い,樹木占有面積率と粗度係数の間に一定の関係があることなどが明らかになった。 (2)では小貝川の河畔植生は多様性が高く,調査区域でレッドデータブック記載種12種を含む353種のシダ・種子植物の成育を確認した。これは河畔林とその林縁・ギャップ等の存在によってもたらされる光環境の空間的不均一性,河川敷特有の微地形の複雑さによる冠水頻度と水分条件の空間的不均一性によると考察された。 (3)ではGISを用いて自然条件,土地利用,土地利用規制の連関性について分析,1984年時点までは自然条件に対応した形で土地利用の系と土地自然の系とに整合性がみられたが,その後,都市化が進み土地利用の混乱が起きており,計画策定時には自然的土地評価を十分にすべきである。
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