研究概要 |
1.研究目的:郊外の森林地帯では膨大な量の自然起源炭化水素が放出されており,それらの多くは光化学反応性やエアロゾル生成能力が高いものが多い。したがって,都市大気汚染物質が森林地域へ輸送されればそこで供給される炭化水素を含む光化学反応が起こり,オゾンやエアロゾルの生成量が増大すると考えられる。ここでは,テルペンやイソプレン等の自然起源炭化水素と低濃度窒素酸化物との共存による光化学とオゾンとの暗反応を行い,オゾンやエアロゾル生成等の全体的な様相の把握と主要酸化性物質の同定を目的として研究を行った。 2.光化学反応によるオゾンやエアロゾルの生成:森林(針葉樹)から多く放出されるα-ピネンに自然起源のイソプレンが加わると炭化水素-窒素酸化物-空気系の光化学反応が著しく促進され,短時間にオゾンやエアロゾルが生成することがわかった。この反応促進の原因はα-ピネンとイソプレンのOHラジカルやオゾンに対する反応性の違いにあり,後述の自然起源炭化水素とオゾンとの反応で生成する強酸化性ヒドロペルオキシドの生成もα-ピネン系へのイソプレンの共存により促進されるものと推定された。 3.オゾンとの暗反応によるヒドロペルオキシドの生成:イソプレンとα-ピネンのモデル化合物,1-メチルシクロヘキセン,β-ピネンのモデル化合物であるメチレンシクロヘキセンとオゾンを反応させ,生成するヒドロペルオキシドを化学発光法検出器付き高速液体フロマトグラフにより分析した。その結果,強酸化性物質として2種の有機ヒドロペルオシドの生成を明らかにした。 これらのヒドロペルオキシドの酸化能力について,亜硫酸水溶液中のイオンの硫酸イオンへの酸化率を測定する方法で評価するべく研究を継続している。
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