紫外線によってヒトの皮膚細胞に誘発される突然変異をDNA塩基配列レベルで明らかにすることを目的として、ヒトの皮膚癌における癌抑制遺伝子(P53遺伝子)の変異を検索した。色素性乾波症患者の日光露光部に生じた皮膚癌8サンプル(BCC6例、SCC1例、組織型不明1例)、正常人の日光露光部に生じた皮膚癌10サンプル(全例BCC)よりプロテネースK処理、フェノール抽出、エタノール沈殿によってゲノムD崎Aを精製し、これらの皮膚癌組織中のP53遺伝子の突然変異をPCR-SSCP法で検索した。PCRにはP53遺伝子の蛋白をコートするエクソン2からエクソン11までについて11組のプライマーを用いて解析した。なお、色素性乾皮症患者の皮膚癌組織からは得られたゲノムDNAの量が少なかったのでこれまで多くの腫瘍において突然変異が高頻度に生じる領域として知られているエクソン5からエクソン9までについてのみPCR-SSCP法で突然変異の検索を行った。その結果、どの癌組織から得たDNAも全て、突然変異のない正常組織から得たDNAと同じ移動度を示し突然変異は検出されなかった。今回用いた方法でP53遺伝子の突然変異を充分検出できることは同時に検索を行った食道癌、肝癌組織において各々47%と32%の腫瘍に突然変異を検出できたことから凝いない。欧米で報告されている皮膚癌でのP53遺伝子の変異はSCCについてであり、今回我々が解析した皮膚癌はほとんどがBCCであったことがこのような結果になった一因ではないかと考えられる。今後は日本人におけるSCCを対象にした検索が必要とされる。
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