研究概要 |
本研究は巨大都市圏の出現による,これまでとは異なった形での都市の気候に及ぼす影響の評価を,大気湿度変化を通して明らかにしようとした。以下に,これまでに明らかにされた点を幾つか列記する。 1)東京・大阪の都心部と都市気候の影響を受けていない地点間の相対湿度の差は,最近10年以上にわたって減少している。水蒸気圧の差も以前に比べると減っている。その理由として,かつて急速に減少した大都市の都心の大気中の水蒸気量が近年は明らかに増加傾向にあるのに対して,乾燥化域が郊外に拡大しているためである。2)東京都心部で人間活動が排出する水蒸気量は市街地化がもたらす植被の撤去による地表からの水蒸気の供給量減少分に見合う値に達している。 2)短期間に田園地帯から中都市に変化した筑波研究竜学園都市にある館野高層気象台では1978・1979年を中心として顕著な相対湿度の一時的な低下が観測されている。これと同じ期間に気温が上昇しているが,水蒸気圧も減少しており昇温だけが相対湿度低下の原因ではない。一時的乾燥化は大規模開発による植被面積の激減も原因と言える。 3)館野の相対湿度は,筑波研究学園都市の開発がほぼ完了して裸地がほとんど無くなった1980年代の中頃には田園地域の値とあまり変わらない状態に戻ったと考えられる。なお,その値は開発前よりやや低いがこれは関東平野全域的な相対湿度低下のためと思われる、つまり,筑波研究学園都市の都市構造はかなり自然状態に近い気候環境を保つものであることが判った。 4)館野高層気象台の観測値に含まれる都市開発の影響の連続的な評価を試みた。移動平均による平滑化では季節変化が障害になるので,従来とは思なった方法で平滑化を試みた。
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