研究概要 |
本研究における「建て詰まり」とは,建築物の密度が高まるにつれて空地が減少し,それ以上新たに建築物を建てると安全性,健康性,快適性の面から環境が阻害される状況を表わすこととし,市街地の建て詰まりの実態を明らかにすることを研究の目的としている。建築物の水平投影面積(建築面積)の絶対量が増大することによって建て詰まりが進行すると考えれば,地区全体の面積に対する建築物の水平投影面積(建築面積)の総和の比率(地区全体のグロス建蔽率)が地区全体の建て詰まりの指標となる。よって,本研究では地域全体の建て詰まりの指標として,グロス建蔽率を取り上げた。まず,縮尺1/1,000の航空写真から作成された地図データべースの建築物ポリゴンデータを用いてパーソナルコンピュータにより,新宿区・中野区・墨田区のグロス建蔽率を100mメッシュ単位で算定した。各100mメッシュ内の全建築物の水平投影面積(建築面積)を1棟づつ算定した上で,メッシュ内の総和を求め,これをメッシュの面積(10,000m^2)で割って,これを100mメッシュ単位のグロス建蔽率とした。次に,グロス建蔽率を算定するエリアの拡大による建て詰まりの変化を解析するために,各メッシュを中心として300m×300m,500m×500m,700m×700mエリアのグロス建蔽率を,100mメッシュによるグロス建蔽率分布図から作成した。その結果,グロス建蔽率が高いクラスターと低いクラスターが混在し,100mスケールで見た建て詰まりが500m程度のスケールで緩和されていることが明らかとなった。今後は,建築物群が建て詰まり状態に達することによって,中庭・道路・公園といった建築外部空間の開放性が阻害されることから,今後は,建築外部空間の天空率を建て詰まり状態のもう一つの指標として取り上げ,これが地区の環境に与える影響を研究する。
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