研究概要 |
多結晶CdS/cdTe太陽電池について、接合の基礎特性を明らかにすると共に,性能向上に向けて接合の水素アニール処理を行った。得られた成果は次の通りである。 (1)数mm角の小面積ダイオードの接合特性は,室温での飽和電流密度が10^<-11>A/cm^2オーダー,容量特性から求めた空乏層付近の不純物濃度が10^<14>cm^<-3>のオーダーデあり,不純物濃度はほぼ満足できる値であるものの,飽和電流密度が同程度の禁止帯幅をもつGaAsダイオードと比較して2桁ほど高い値であることがわかった。 (2)接合内の再結合中心について解析したところ,活性化エネルギー0.4eV付近に存在しており,飽和電流密度を減少させるにはこの中心を不活性化することが必要である。この原因を明らかにするためDLTS測定を行い,深い不純物レベルとして価電子帯から0.55eVという値を得たが,この信号には少数キャリア注入が原因と見られる逆方向のピークとの重なりがあり,正確に合離できなかった。今後ピーク分離を行いオリジンを解明していく必要がある。 (3)cds/cdTe接合の各接合作製段階での水素アニールを試みたところ,Cds膜抵抗が大きく減少し,直列抵抗損失を大きく減少させることができたことに加え,空乏層付近の不純物濃度も合わせて減少していることがわかった。このことは空乏層が広がることに対応し,多結晶太陽電池のようにキャリア拡散長の短い材料では,光電流の増加にも寄与していることがわかった。 (4)多結晶材料の特性が太陽電池出力に与える影響を調べるため,温度および入射光強度に対するI・V特性の変化を調べたところ,光電流が温度上昇とともに減少するという,単結晶とは反対の傾向がみられた。原因として不純物レベルの活性化とともに空乏層幅が変化する事が上られる。
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