研究概要 |
本研究は,将来の高度な光エレクトロニクス技術の発展に備えて,既存の半導体材料には見られない新しい光物性機能を持った新規材料を,広く無機・有機物質の中から開拓し,その基礎的な電子物性を解明するとともに,その成果に基づいて新しいコンセプトによる機能素子の開発を行うことを目指す。この目的に沿って上記の四名の計画研究分担者が,互いに密接な協力態勢を保ちながら研究を進める。3年間の研究期間の最終年度である平成4年度における研究成果の大要は以下の如くである。 国府田:これまで各種の有機半導体の電気的・光学的非線形現象を組織的に研究してきたが,本年度はシリコン高分子(ポリシラン)の3次非線形光学効果に対象を絞り,実験的・理論的に従来にない精密な研究を行った。各種の非線形光学スペクトルの特徴は,高分子主鎖上の1次元励起子のモデルによって定量的に説明できることが,この結果明らかにされた。これらの高分子半導体は究極の量子細線として重要である。 柊元:2種類の間接遷移型半導体を積層した(Ga)m(AlP)n系の短周期超格子を有機金属気相法によって初めて作製し,直接遷移型の半導体に匹敵する高効率の可視発光を示すことを見いだすと共に,その発光素子への応用の可能性を実際に示した。 佐藤:Zn,Cdを添加したCuAlS_2の青・緑色発光の原因について,結晶工学および光物性の両面から考察した。また,CuAlS_2に一連の遷移金属を添加したときの光吸収とESRを測定,解析した。さらに,Tb,Tm,Smなどを添加したCuAlS_2の発光スペクトルを測定した。 岡:半磁性半導体の軍結晶の研究では,Zn_<1-x>Mn_xTeが将来の光通信に必要なファラデー素子として良好な特性を示すことを明らかにした。半磁性半導体超格子は,Cd_<1-X>Mn_XTe/ZnTe超格子を作製し,量子井戸励起子発光過程についての物性制御が行えることを示した。
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