研究概要 |
半導体の光学定数(光学誘電率、屈折率等)は、光電子デバイスの設計、性能評価の上で非常に重要である。本研究は、バルクII-VI族化合物半導体や超確子の光学定数を、波長可変エリプソメータで測定し、これら材料の性質を明らかにした。 その結果、バルクII-VI族化合物半導体(ZnSe,ZnTe,CdTe,ZnCdTe混晶)では、光学誘電率は表面の化学処理方法に非常に敏感であり、従って信頼性の高いデータを得るためには細心の表面化学処理が必要であることを明らかにした。なお、光学誘電率が表面の化学処理方法に依存する理由としては、自然酸化膜の残存や表面凹凸(数十〜数百オングストローム程度)の発生が上げられる。ちなみに我々が見いだした最良の表面化学処理方法としては、例えばZnTeでは臭素メタノール混液による化学機械研磨のみ、CdTeでは臭素メタノール混液による化学機械研磨の後のNaBH_4水溶液での還元処理である。このようにして測定した誘電率スペクトルやこれの微分スペクトルを、我々の提唱しているモデル誘電率理論で解析した。E_0/(E_0+Δ_0)構造は3次元M_0型臨界点、E_1/(E_1+Δ_1)構造は2次元M_0型臨界点、E_2構造は2次元M_1型臨界点でうまく説明された。 II-VI族化合物半導体超格子については、ZnSe/ZnS歪超格子の光学的性質を波長可変エリプソメータで測定し、スピン軌道分離正孔が関与した励起子遷移ピークを観測した。微分スペクトルの解析から、この励起子の束縛エネルギーとして約160meVが求まり、バルクZnSeの約4倍の大きさであることが分かった。また、超格子でもE_1/(E_1+Δ_1)遷移に起因したピークが観測され、バルクZnSeのそれと比ベ高エネルギー側に若干シフトすることが分かった。
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