研究概要 |
マウス抗ダンシル(DNS)抗体のV_H、V_Lからかる可変領域フラグメントF_V(MW:25K)を用い、抗原認識部位の解析を行った。 抗体産生細胞を種々の安定同位体標識アミノ酸を含む無血清培地下で培養し、部位特異的に標識した抗体を得た。安定同位体標識FvフラグメントはC_H1ドメイン欠損抗体をクロストリパインで消化して得た。 昨年度までの研究の結果、抗原存在下でFvフラグメントの2個のTyr残基が抗原のダンシル環と分子間NOEを示すことが明らかになった。そこで、本年度は安定同位体フィルター法NMRを用いて、Fvフラグメント中に存在する全てのTyr残基側鎖のNMRシグナルを帰属し、その抗原認識機構を解析した。 既に完了している主鎖アミド基の帰属をHMQC-HOHAHAを用いて、Cαプロトンまで拡張する。次に、帰属の確定したCαプロトンとTyr残基側鎖の2',6'プロトンをω_1-filtered NOESYにより連結する。さらに、Tyr残基側鎖の2',6'プロトンと3',5'プロトンはHOHAHAスペクトルにより連結する。これらの解析の結果、Fvフラグメント中に存在する全てのTyr残基側鎖の帰属が抗原存在下および抗原非存在下において完了した。 確定した帰属に基づいてFvフラグメントと抗原との分子間NOEを解析したところ、ダンシル環の近傍(4A以内)にH鎖CDR3の根元に位置する、Tyr-96HとTyr-104Hが存在することが判明した。この結果は、昨年度までに行ったスピンラベルハプテンを用いた結果とも一致した。
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