研究概要 |
本研究の目的は、細胞接着性オリゴペプチド、Arg-Gly-Asp-X(X=Ser,Val,Thr)(RGDX)およびTyi-Ile-Gly-Ser-Arg(YIGSR)を人工的に合成し、それ自身および高分子グラフト化物による各種細胞の基質への接着阻害効果と、各種オリゴペプチドを生体適合性に優れた不溶性高分子材料表面に化学固定したハイブリッド化材料に対するタンパク質、細胞の吸着・接着特性を実験的に評価することである。 本年度においても、各種オリゴペプチドの合成は液相法を採用し、前年度と同様に、ペプチド延長法としてフラグメント縮合法を用い、DCO法、活性エステル法、アジド法を用いた。 エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)膜表面にカルポジイミド法により各種オリゴペプチドをN末端固定(共有結合)し、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞CHO-K1、ラット腎細胞NRK、ヒト表皮腫瘍細胞A431、Hela-S3、RLC-16などの各種細胞の軍着挙動を調べた。RGDXおらびYIGSRでは、いずれも、活性化EAA膜自身のみおよびRGDの細胞付着率に比較して接着初期段階から高い接着効果が得られた。YIGSRのC末端をアミド化するとさらに高い接着率が得られた。一方、所定濃度の各種細胞を播種し、それぞれのオリゴペプチドを細胞懸濁液に添加し、培養ディッシュ中で培養した後、付着実験と同様の操作により細胞の基質接着阻害効果を位相差顕微鏡で観察した。この場合にも、RGDXはRGDよりも高い阻害効果が認められた。オリゴペプチドを水溶性高合子にグラフト化させて得られた複合体による比較実験を行ったが、これまでのところ、予期されるような高分子効果は得られていない。細胞認識部位であるRGDXの第4番目アミノ酸の存在の有効性を検討するために、分子力場法によるRGDXのコンホメーション解析を行い、モデル計算から主鎖構造を推定した。
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