研究課題/領域番号 |
04205085
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高野 幹夫 京都大学, 化学研究所, 教授 (70068138)
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研究分担者 |
広井 善二 京都大学, 化学研究所, 助手 (30192719)
坂東 尚周 京都大学, 化学研究所, 教授 (70027027)
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研究期間 (年度) |
1992
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研究課題ステータス |
完了 (1992年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1992年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 遷移金属酸化物 / エピタクシャル薄膜 / 人工超格子 / 反応性蒸着法 / (NiO)m(MgO)n / (Fe_3O_4)(MgO)n |
研究概要 |
遷移金属酸化物のエピタクシャル薄膜および人工超格子を反応性蒸着法により作製して、磁性と電気伝導性に関する新しい機能を開発するために必要となる、基礎的な知見を得ることを目的とした。 1.(NiO)m(MgO)n超格子 NiOの構造中では、Ni^<2+>イオンの形成する三角格子が[111]軸に沿って積み重ねられている。Ni^<2+>イオンの磁気モーメントは、各三角格子内で強磁性的に揃っているのに対し、上下2枚の三角格子の磁気モーメントは互いに反平行である。従って、α-Al_2O_3の(0001)面を基板にして、mが奇数値をとる超格子を作製すると、フェリ磁性が現われると期待できる。X線回折法により、作製した試料が(m,n)=(7,1)などのように予定した周期をもつことを確認した。まずMgO基板上に作製したNiO薄膜(厚さ50〜200Å)につき、X線吸収スペクトルの角度依存性から、各Ni^<2+>イオンの磁気モーメントが膜面に垂直な方位をとっていることが明らかになった。基板とのミスフィットによる格子歪みが、自由な結晶には見られない磁化容易軸を生み出しているものと思われる。 2.(Fe_3O_4)m(MgO)n超格子 Fe_3O_4とMgOの間の格子不整合な僅か0.3%であるので、きれいな超格子構造を組む。その予備的な実験としてMgO(001)基板上に作製した単純なFe_3O_4薄膜の結晶性は非常によく、原子間力顕微鏡により調べた表面の凹凸は、±2Åであった。α-Al_2O_3(0001)面上に作製した超格子試料のX線回折図は、(2h+1,2H+1,2h+1)ピークが太い。次の事情による。スピネル構造の[111]軸を含む断面では、/O/Fe^B_<4/5>/O/Fe^A_<1/2>Fe^B_<1/5>/O/にようにFeを含む層とOを含む層が積み重なっている。超格子に含まれるFe_3O_4層の構造が/Mg/O/Fe^B_<4/5>/O/…であるか、あるいは/Mg/O/Fe^A_<1/2>Fe^B_<1/5>/O/…であるかまちまちであれば、上記の指数のピークはこの相関性の低さのために太くなる。 室温での磁化の測定によれば、Fe_3O_4層の厚みが50Åの場合は、履歴のない超常磁性的な振舞いが見られるのに対し、110Åの場合には強磁性成分のあることを示す履歴が現われる。ただし、磁化は簡単に飽和せず、磁場に比例してなお増加する成分が、かなりある。これらを説明する単純なモデルとしては、MgO層に接する一定の厚み(〜20Å)の部分では、磁化の熱的な揺らぎが大きい、というものである。
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