研究概要 |
本研究は、遺伝子発現の調節を行なう各種転写調節因子のうちのPOU転写調節因子群の哺乳類の神経系の発生における役割を明らかにすることを目的としており、本年度はマウス胚由来未分化細胞(ES細胞)内での相同遺伝子組換えを利用することにより、哺乳類神経系で特異的な発現が確認されている3種のPOU転写調節因子-Brn4,5,及び6に変異を有する変異マウスの作成を試みた。 1.Brn6変異マウス マウスBrn6遺伝子cDNA(東大・浜田より供与)を用いて、マウスES細胞由来の染色体DNAライブラリーよりBrn6遺伝子を単離し、これに遺伝子産物の殆んどが欠失する形の変異を試験管内で導入した。こうして作成した変異Brn6遺伝子を電気穿孔法を用いてES細胞内にトランスフェクトし、約400クローンのES細胞を単離してサザン法を用いて相同遺伝子組換えが起きたクローンを検索した。この結果、5クローンで染色体上のBrn6遺伝子に変異が導入されていることが確認された。次いで、このうち3クローンのES細胞を、C57B6マウスのブラストシスト内に注入することによりキメラマウス(F0)を作成し、そのF1マウスを得て、染色体DNAを解析した結果、Brn6変異マウスが作成されたことが判明した。現在、この変異マウスのヘテロ接合体同士をかけ合わせ、ホモ接合体の神経系発生の解析を行なっている。 2.Brn5及びBrn4変異マウス Brn5遺伝子に関しても、上記Brn6遺伝子と同様の手法で変異マウス作成を進めており、現在変異ES細胞の単離を行なっている。Brn4遺伝子に関しては、遺伝子の単離を終え、変異Brn4遺伝子の作成を行っている。
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