今年度は最終年度にあたるため、すでに開発したシミュレーションモデルの特性を評価すること、およびこのモデルを使用して特定の地域の移動・拡散についてシミュレートする作業を行った。 1)モデルの特性評価は、まず1辺が20セルの正6角形状の仮想的な地域を設定し、その中心から初期人口集団が外縁のセルまで拡散するのに要する年数を測定することにより行った。外縁セルに到達する前に人口が消滅することがあればそれも記録した。そしてパラメータを変化させることによる拡散速度の変化を観察した。その結果、拡散速度および人口の消滅頻度に大きな影響を与えるパラメータは、人口増加時のNRR、人口移出可能となるCarrying Capacityの水準、セルの住人各人が移住先へ移動する確率などであることが判明した。人口が増加すると収容するのに必要な土地が多くなり、また拡散速度はCarrying Capacityとは独立にNRRに依存することになる。 2)サフール大陸への移住に始まる人口拡散を対象とし、適当と考えられるパラメータの値を設定し、シミュレーションを実行した。大陸北北西の端のセルに初期人口1000人を配し、大陸の最南端まで人口が拡散するまでの年数を求めるべくシミュレーションを行った。このとき、大陸全体のCarrying Capacityを約15万人と約30万人の2通りについて試行した。今回設定した条件によるシミュレーションにおいては、約4800〜6200年で大陸最南端のセルに到達した。全体のCarrying Capacityを30万人にしたとき、南端に達するまでの年数は約1200年多くなった。これは初期人口が2倍になるまでの時間がこれだけかかるからで、それ以降はどちらも拡散速度に大差はないものと解釈される。
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