1.本研究は、(1)最近に文献を中心に新世界の更新世末における大型哺乳類の絶滅に関するデータを集め、その原因と先史モンゴロイドの拡散との関係を基礎資料とするとともに、それらをまとめてひとつのシナリオを考える、(2)この分野に関する文献目録を作成することの2点を目的とした。 2.データ集めなど主な作業は平成3年度に行なったので、本年度については資料はあまり増加していない。本年度はむしろそのまとめをすることを主眼とした結果、他分野の人にもわかるような平易な文章で5件の発表(印刷物)を行なう機会を得、当初の目的は達しえた。 3.過去350万年間の化石資料から解釈されるいわば大スケール絶滅パターンと、更新世末の絶減にかかわる詳しいC年代のデータからは、気侯変動説よりは人類による過剰殺戮説の方が有力のように思われる。しかし、同時にどちらか一方だけが原因だったという可能性も低いように思われる。 4.むしろ、更新世末におこったアメリカ大陸産大型哺乳類の大量絶滅は、急激な気侯変動によって多くの哺乳類にストレスがかかっていたところへ、人類の拡散に伴う殺戮が加わって、両者が相乗的に作用していっきょに進行したと考えるのが最も無理がないように思われる。 5.ただし、これを証明できるほど詳しいデータは現在まだ存在していないので、この結論は推定の滅を出ていない。
|