二年目に入って本年度の研究研画は、作年度の研究を引き継いで、それらをいっそう精緻にすることに狙いがあったが、ほぼ当初の方針どおりに遂行されたと考えている。現代倫理学と科学技術との関係についての研究(1)は、ヨーナスの環境倫理や脳死臨調報告の分析というかたちで考察しえたし、コンピュータ・エシックス資料の分析という課題(2)は、「非同期性(=非共時性)」をめぐるコミュニケーション・メディアの間題を検討することでかなり具体的な次元まで追求することができた。 もっとも、今年度の最大の収穣は、他群他班の研究会やシンポジウムに数多く参加する機会が与えられたことだろう。そこで得られたものは少なくない。先に触れた「非同期性」の観点もそうした中から得られたものである。さらなる研究の進展をはかるためにも、来年度もこの種の交流を続けていきたいと考えている。 ただし、研究が進むにつれ、既成のコンピュータ・エシックス研究の枠内で議論することに次第に満足できなくなっていることも指摘しておかなければならない。そのため本年度は、作年度の方針にさらに技術論と身体論の観点を加えた研究方向を目指したが、とりわけ身体論的アプローチからは得るところが多かった。その研究成果の一部は第五群の合同研究会(3月13日)で(「受容の変容」というテーマのもとに)報告される予定である。 現在取り組んでいる課題は、第五群全体のテーマである「文化変容」という間題に研究代表者の二年間の研究成果をどのように組み入れるかという点である。今のところ「情報化にともなうモラルの変容」という枠組みで研究をまとめる方向を探っているが、これは来年度の主たる課題の一つになるはずである。おそらく来年度後半あたりから、こうした課題を論文のかたちでまとめる作業に入ることになるはずである。
|