研究概要 |
地中に埋没している古墳などに用いられる大型石材は,その周囲の土壌とは異なる電気伝導度を持つ。このため非破壊の手段で石造構造物を探査するのに電気探査法が有効であることは知られている。しかし,遺跡の所在する場所では水田のような地表が湿潤である場所が多く,大量の電流を流さなければ地中深くまで探査できないという欠点がある。更に電流を流すための電極を地中に打ち込む作業に多くの労力を必要とすることから探査効率が悪いという欠点もある。そこで本研究では比抵抗法以外に人工電磁場を利用して電場と磁場の変動から地下の電気伝導度を求める地磁気地地電流法(マグネトテルリーク法,MT法)特にVLF波を用いた探査を行った。現在使用されている地磁気電流法は主に地下深部の構造を探査するために開発されたものであり,そのままでは遺跡のように浅部に埋没している物には有効であるかどうかまだ不明な点もある。本研究では石造構造物探査を目的としているが,実際の遺跡では常に石造構造物がある訳ではなく,住居跡や土坑が発掘されることも多い。地磁気電流法の有効性を検証するためここでは石造構造物と限定するのではなく一般的な遺跡をフィールドに選び探査を行った。一般的な遺跡で有効であれば比抵抗変化の大きい石造構造物にはより強力な手段となりうるからである。VLF探査がどの程度有効かを調べることを目的としているため物理探査を実施した後で発掘調査が行われ,探査結果と比較できることが望ましい。このためにまだ発掘調査はされていないが後で発掘が行われる予定の場所である秋田県大館市,池内遺跡を調査地とした。池内遺跡は大館市萩ノ台に位置する遺跡で,縄文前期-中期,平安時代の両遺物が確認されている。フラスコ状ピットや竪穴式住居跡がいくつか既に発掘されている。この池内遺跡ではまで発掘されていない場所を選びVLF探査を実施した。発掘調査により明らかにされた比較的深い土坑を選び出せばVLF探査の結果とある程度対比できた。測定メッシュ間隔が2mと粗いために小さな土坑の形を明らかにすることは出来なかったが,土坑の集中している場所のような大きな構造はある推定すすことが可能であった。メッシュ間隔を小さくして測定すれば土坑の形の推定が可能となると思われる。石造構造物の場合,比抵抗は土壌よりも大きいため,今回得られた結果よりもコントラストが強く現われ,より明解に構造を示すことが出来ると予想できる。いずれにしても簡単に実行できるVLF探査は遺跡探査に有効な手段であることを実証した。
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